短編2
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義父

初めての子供を旦那の実家で産むことになった。

旦那の実家は九州のK県だ。

私は初めての出産だし地元のC県で産みたかったのだが、義母のどうしてもの一言で仕方なく行った。

無事に男の子が産まれ退院し旦那の実家へ戻った。

2週間程お世話になる予定だった。

旦那は仕事のために先に地元へ戻った。

初孫を抱いて嬉しそうな義母を見ていると帰ってきて良かったな…と思った。

私達親子は仏間で寝ることになっていた。

「おじいちゃんにも顔を見せてあげて」

義母に言われ仏壇に息子を連れて行く。

義父は旦那が小さい頃に亡くなっている。

「お義父さん、無事に男の子が産まれました」

心の中でつぶやき手を合わせた。

実家に戻って初めての夜。

なんだか胸が苦しくて目が覚めた。

目を開けたと同時に天井の右隅へ何かがバッと飛んだ。

目をこらしてよく見るとそれは人だった。見覚えのある顔…。

朝、義母が起きてくるのを待って言った。

「昨日、お義父さんが来ましたよ。」

「えぇっ!?」

義母が驚き声をあげる。

次に聞かれた。

「…普通の姿だった?」

「えぇ。写真のとおりのお義父さんでした。」

「…本当に?…そう。あの人来たの…。」

私が見た義父は顔は写真のままの義父だった。

ただ体には蜘蛛のような手足がはえ、天井に逆さまに張り付き私達を見ていた。

そしてカサカサと歩き回って部屋を出て行った。

「そう…。あの人来たの…。戻って来たのね…。」

義母はしばらくそうつぶやき続けた後

「あなたも初めての出産で疲れたでしょう?もう自分の家へ帰ったほうがいいんじゃない?」

と言い私達は有無を言わさず自宅へ帰らされた。

その後義母からは一切連絡はない。たまに電話をしても元気でやっているから心配ない、と切られてしまう。

あの日見たのは確かに義父だったと思う。

ただ孫を見に来たというような温かい雰囲気ではなかった。

旦那には悪いけど正直二度とあそこには行きたくない。

長々と失礼しました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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