短編2
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龍の刺繍

私の母方の祖父母の話です

心霊系ではないですが、不思議な話です

まだ祖父母が新婚だった時、祖母が原因不明の病に倒れ入院しました

日に日にやつれ、目に見えて弱っていく妻を祖父は見ていられず名医と呼ばれる医者を訪ねてまわり、手を尽くしました

しかし、どんな名医が見ても原因はわからずとうとう余命を宣告されました

「1か月もたないだろう」

どの医者に聞いても答えは同じでした

更に、もう最期なので祖母の親戚を集めるようにとも言われました

広島出身で、戦争の時に弟以外の身内を全て失った祖父にとって祖母は数少ない家族です

藁にもすがる思いで、祖父は知り合いを通じて知った、ある寺の住職を訪ね土下座して祖母に会ってくれるよう頼みました

数日後、住職さんが祖母の見舞いに来てくれたあと祖父に言いました

「龍が見える」

確かにその時、裁縫好きな祖母は大きな龍の刺繍をつくっていたそうです

祖父がそのことを伝えると、住職さんはすぐにその刺繍をもってくるよう祖父に言いました

祖父が祖母に刺繍をもらいに行くと、あとは龍の目を入れるだけで終わる、死ぬまでにこれだけは完成させたいから少し待っていて欲しいと言って聞かなかったそうです

その時、祖父は絶対に完成させてはいけない気がしたらしく、半ば無理やりに未完成の龍の刺繍を祖母から取り上げ住職さんのいる寺へ持って行くと、住職さんはその刺繍を燃やし、お祓いをしてくれました

すると不思議なことに祖母の体調はみるみる回復しすぐに退院できたそうです

退院後、住職さんは祖父に言いました

「龍に目を入れおわっていたら奥さんは、龍に生気を吸いとられて亡くなっていたでしょう」

そして、80歳になった今も祖父母共に元気で暮らしています

その住職さんは去年亡くなられました

98歳という大往生でした

その龍がなんだったのか結局わからずじまいでしたが、その住職さんがいなければ母も生まれていなかったわけで、当然私もこの世に生まれていなかったのかと思うと感謝の気持ちでいっぱいです

これは全て実話です

この住職さんにまつわる話が他にもあるのでまた更新したいと思います

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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