中編4
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ゾンデ

山登りが好きな知り合いに聞いた話。

知り合いによると話してくれた人は、結構御年を召された山小屋の主で、

結構な人数をそのゾンデで救ってきたという。

ゾンデとは雪崩で埋没した人を発見するための棒のこと。

そんな老人が、知り合いにこんな話をしてくれたという。

その日は、6人の登山者とともに雪山に登っていたのだが、

急に吹雪が激しくなり近くにあった山小屋で野宿することになった。

ところが翌日になってもいつまでも吹雪は収まらず、このままでは帰れな

くなるかもしれないという話になった。

そこで、すぐに下山することになった。

下山中に吹雪は弱まるどころか一層激しくなり、下山は困難を極めた。

しかし昼ごろになると吹雪も収まり、太陽がでてきた。

これでこのまま順調に下山できる、かと思われた。

しかし山の中腹辺りに来たとき、先にその異変に気づいたのはその老人だった。

山の頂上あたりから地響きのような轟音が聞こえる。

その老人が雪崩だということにすぐに気がついた。

老人の隣にいた2人もそれに気づいていた。

たがほかの3人は老人たちのかなり前方の方を歩いており、雪崩にはまだ気づいていなかった。

老人は大声をだして3人に逃げるように叫んだが距離が遠すぎて聞こえなかったらしい。

その3人が気づいたときにはもう遅く、雪崩はすぐ近くまでせまっていた。

老人と隣にいた2人は雪崩だときがついたときにすぐに山の脇にそれて雪崩を回避したが、あとの3人が雪崩に巻き込まれてしまった。

老人はすぐにゾンデを使い、3人の捜索を開始した。

あとの2人には救急車の手配を頼んだ。

雪をゾンデで3人が埋まっていると思われるところへ突き刺すと感触があった。

雪をいそいで掘ると一人目が見つかった。

発見が早かったため、無事だった。

二人目も同じように発見し無事で、残すはあと一人となった。

だがあと一人がどうしても見つからない。

捜索開始から二時間たってもあと一人がどうしても見つからなかった。

ほかの4人にもゾンデで探してもらっていたが見つからないのだ。

ほかの4人が探している中、老人は雪崩に巻き込まれた2人がいた方とはまったく別の方向にある大きな岩の下が気になっていた。

「こんなとこに岩があったか?雪崩で一緒に流れてきたのだろうか・・・」

老人はそう思うと、もしかしたらという思いを胸に半分雪でうまった岩の横をゾンデで突いた。

その時、たしかな感触があった。

念のもう一度突いてみた。

確かな人の感触。

ほかの4人を呼び急いで雪を掘り起こす。

そこには残りの一人がいた。

しかし見つけるのが遅かったせいだろうか、その男性はもう亡くなっていた。

老人はその男性の額から血がでていることに気づいた。

まさかゾンデで頭を突いてしまったのだろうか・・・。

彼はそれが原因で死んだのだろうか・・・。

老人は心の中でそう思ったがそんなに強くは突いていないので、寒さで死んだのだろうと思った。

ほかの2人は救急車を呼んだらしいがなかなか救助に現れない。

そうこうしているうちに辺りは暗くなり、雪が降り始め吹雪が激しくなった。

今日はその場でテントを張って明日まで耐えることになった。

男性の死体はその場に放置したままだったのだが、寒さと疲労のせいで誰もそのことを覚えていなかった。

ほかの5人は2人つづが一つのテントで寝ようと提案したが、老人は一人で寝ることにした。

その夜、寒さと疲労ですぐに眠れるはずなのだがなかなか老人は寝付けなかった。

ぼーっとテントの上をながめて横になっていると足音が外から聞こえてきた。

ザクッ ザクッ ザクッ

なんだ?誰だろう?そう思い、立ち上がろうとしたとき金縛りにあい動けなくなった。

横になったまま身動きができない。

そうこうしているうちに

足音は段々と老人のテントに近づいてきた。

足音が近づいてくるにつれておかしなことにきづいた。

足音が地面ではなく、宙を浮いて歩いているように聞こえるのだ。

足音が老人のテントのそばまできたとき、足音はやはり上の方から聞こえた。

すると老人のテントの天井の部分に人影が見えた。

とその時だった。

ズボッと音をたてて、ゾンデがテントを突き破り老人の腹の寸前のところでとまったのだ。

老人は思わず叫びそうになったが声が出せない。

すると次は首のところにゾンデがきた。

これも同じく寸前のところで止まった。

老人は今日最後に見つけた亡くなった男性のことを思い出した。

男性が化けてでてきたのか?

するとやはり俺が男性を殺したのか?

すまない・・・あそこに頭があるとは思わなかったんだ!助けてくれ!

そう思ったとき、ズボッと音をたててテントを突き破り、老人の額にゾンデが突き刺さされそうになった。

その瞬間、目の前が真っ白になり朝になっていたらしい。

額は無事だったそうだ。

吹雪は完全に収まっていてそのあとすぐに救急隊がかけつけ老人たちは救助されたらしい。

男性の死因はやはり凍死とのことだった。

最後に老人は知り合いにこう話したらしい。

老人「ゾンデで額を突かれそうになった瞬間にな、目が合ったんじゃよ。」

老人「ゾンデで穴が開いた部分にそのゾンデをもっている主がみえたんじゃよ。」

知り合い「死んだ男性ですか?」

老人「いや、もっと身近なやつじゃった。」

老人「ゾンデを持っていたのはな、わしじゃったんじゃよ。」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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