中編5
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言ってはいけない場所3

「先輩・・・怖いんですよ、思い出すのが・・・」

Kの体験はおそらく俺の想像を遥かに超えているだろう。だけど、話を聞く位ならできる。たとえ、何の助けにもならなくても・・・。

「なあK、俺はお前に何もしてやれん・・・話したくないんだったら、無理すんな、話して気が楽になるんだったら話してくれ」

Kはしばらく考えていた。その間俺は、Kの顔を眺めながら、(こうやって見ると、Kって結構男前じゃん)などと考えていた。

「先輩・・・兄さんが、死んだって事、実はS知らないんです」

(???)

Kの話はいつも俺の意表をつく。

「行方不明って事になってて、だからS、まだ生きてる、と信じてるんですよ」

「・・・でも、死んでるんだろ?」

「実は僕も、兄さんの死体を見たわけじゃないし、ほんとに死んだのかどうか、誰も知らないんです」

俺は少しイライラした。(からかってるのか?)

危うく口から出そうになった。

「今から話す事は、本当は一生、誰にも言わないって心に決めた事なんです・・・先輩しかいないんです・・・聞いてくれますか?」

頷く俺を見て、Kは話し始めた。

「霊能者のおばあちゃんの事、言いましたよね」

「ああ、おまえんちの隣に住んでるんだろ」

Kは軽く頷いて話を続けた。

「今から思えば、そのおばあちゃん、子供に絶対話しちゃいけないような事、僕にいろいろ教えてくれたんですよ、それこそ姥捨てとか、間引きとか」

誰か聞き耳を立ててる奴がいないか周りを気にしながら、俺はKの話に耳を傾けた。

「話をした後には必ず言うんです、誰にも言うな、と」

「そら、友達に言っても誰も信じてくれんわな」

俺が言うと、Kは少し笑って頷いた。

「底なし沼の話を聞いたのは、僕が6年の時ですよ、ありえないでしょ」

「確かに!」

俺は確信した。(その霊媒師、絶対イカレとる!)

「僕は小さい頃から、怖い体験をしていたから、基本、人一倍恐れなんですけど、その、底なし沼ってのが、気になって気になって仕方なかったんですよね」

「うん、わかるわ、その気持ち」

(俺なら、その日の内にその山探索するわ)

「Sは・・・幼馴染で仲良かったんですけど、僕以上に怖がりだったし・・・結局、Sの兄さんに話を持ち掛けたんです」

Sの兄は、二つ返事でその話に乗ったらしい。彼は中学2年で柔道の段持ち、身体は優にKの倍はあったという。

底なし沼の探検は日曜日の午後1時と決まった。

その日は朝から晴天だった。

Kはお菓子を入れたリュックを背負い、心はもう遠足気分だったそうだ。

「不思議なのは、その沼にまつわる怖い話をその時は、全く忘れてたって事かな」

俺は気になっていた事をKに聞いてみた。

「おいK、隣に住むばばあ、お前をそこに行かす為に底なし沼の話をしたんじゃないんか?」

Kは頷いて言った。

「先輩、僕も確かにそう思った時期がありました。でも、とてもそんな人には見えないんですよね。会ってもらうと分かると思うんですけど」

「会いたくもねーわ、そんなババア!」

俺は絶対その霊媒師が怪しいと思った。子供に『間引き』の話をする事自体、ありえねーし。Kは人がいいから騙されてるに違いない!

Kは自販機で何杯目かのコーヒーを買うと、戻ってきて話を再開した。

「問題の山のふもと、着いたはいいんですけど、道らしい道は全くないんですよね」

2人は沼にたどり着けるような道を、あっちこっち探し回った。

「沼があるくらいだから、山水が出てるとこ探そう」

Tがそう言うので、2人は手分けして探した。

しばらくして、

「あった!ここだ!」

Tが叫んだ。

Kは駆け寄った。確かに水がちょろちょろ流れ出ている。

Kはその時、水の流れに沿って立つ大きな岩に隠れるように、苔むした地蔵が佇んでいるのに気付いた。

ぞわ・・・Kの全身に悪寒が走った。

Kは思い出した。この山にある沼の謂れを・・・

「てっちゃん(年上なのにこう呼んでいたらしい)、僕・・・なんか怖い」

Kの全身が怯えていた。この先に潜む何かを肌で感じたのだ。

「大丈夫だって、なんか出てきたらぶっ飛ばしてやる」

てっちゃんは笑ったが、Kはもう足がすくんで動けない。

「わかったK、沼まで行くのは止めよう、ちょっと様子を見るだけ、やばい、と思ったらすぐ帰ろう」

「てっちゃん、止めた方がいいって!なんか、怖いよ」

Kは泣きだした。

Kの様子を見ていたTは、2人で行く事を諦めて、Kに言った。

「わかったわかった、俺1人で行ってくるから、ここで待ってな、すぐ戻るから」

Tは必死に止めるKを残し山を登り始めた。

「てっちゃん!」

Kは泣きだした。一人ぼっちになるのが、たまらなく怖かったのだ。

仕方なくKはTの後を泣きながら付いていった。

「帰ろう!てっちゃん!帰ろう!」

泣きながら叫ぶKの声が耳に入っている筈なのに、Tは黙々と登り続ける。道らしい道はないのに、さほど木の枝に邪魔される事はなかった。

10分ほど歩いただろうか、Tの歩く先に一体の地蔵が見えた。

(!)

Kは、自分が泣くのを一瞬止めてしまう程の殺気をその地蔵に感じたらしい。

Kの本能が叫ぶ。

その地蔵を超えたら死ぬ!と。

「てっちゃ!」

Kはありったけの声で叫んだ。

Tは歩みを止めず、その地蔵を通り過ぎた。

パキ!

太い枝が折れるような音が、辺りに響き渡った。

Tが立ち止り、ゆっくりと振りむく。

(!)

Kは自分の目を疑った。

Tは口から大量の髪の毛を吐き出していたのだ。

Tはうつろな目でしばらくKを見ていた。

Kは身体が硬直して全く動けない。

突然Tは、口から出た髪の毛を両手で掴んで、引きずり出した。

ベチャ!

嫌な音をさせて、それは枯葉の上に落ちた。

その落ちた物が動き始めたのを見て、Kは意識を失った。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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