言ってはいけない場所(終)

中編3
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言ってはいけない場所(終)

「意識が戻った時には、てっちゃんはもういませんでした。辺りはまだ明るくて、そんなに時間が経ってない感じでした。」

頭が朦朧として、何も考えられない。恐怖は何故か、さほど感じなかったという。

ふらふらと立ち上がると、(早く大人たちを呼ばなきゃ)と思って山を降りようとした。

ふと気になって、後ろを振り返った。

(地蔵がない・・・!)

Kはあまり深く考えないようにして山を降りた。

来る時にはさほど思わなかったが、家も無い、田んぼも無い道が異常に長く感じられたという。

ようやく畑が見え始めた時、一台の軽トラが目に留まった。

近づいて行くとすぐそばで、おじさんが一人畑仕事をしている。

Kは泣いて、おじさんのとこへ駆け寄った。

そのおじさんは黙ってKの話を聞いていた。そして言った。

「いいか、この事は誰にも話すな、家の人にも友達にも、誰にもだ!約束できるか?」

Kは泣きながら頷いた。

おじさんは、Kを車の助手席に乗せると、前方を見ながら話し始めた。

「今から助けに行っても無駄だ。たぶんもう、沼の底に沈んどる」

Kは驚かなかった。

(てっちゃんはもう絶対助からない)

とKも感じていたのだ。

「もう、何年になるかのう・・・同じように、あの山に入った生徒がいたんだ」

Kはうつむいて、おじさんの話を聞いていた。涙は止まっていた。

「その事を伝え聞いた父親が、仲間数人と、息子を助けに行ったんだな・・・

警察にも言えない、消防にも頼めない、あの場所は、地元の者以外の人間には知られたくない場所なんだよ」

「あの山の事、みんな知ってるの?」

Kは尋ねた。

おじさんは頷いて、

「大人はみんな知っている。子供たちにも、時期がきたら、伝えるようにしている、間違って山に入ったらまずいからな・・・」

(父さんや母さんも、それを知ってるんだろうか・・・)

Kは明るくて隠し事などしそうにない両親のことを考えて、少し不思議な気がした。

「山を探しまわっても見つからない、父親たちは、機械を使って沼の水を全部抜こうとしたらしいんだが・・・・」

(!!)

「何を見たんか知らんが、山から戻ってきた者みんな、頭がおかしくなってしもうた」

おじさんはエンジンをかけ、車を発進させた。

「家までは送れん、俺が関わってると知られたらまずいからな」

「先輩、僕、A県の名誉にかけて言いますけど、赤子を捨てた母親が、冷酷な人間だったかというと、決してそんな事はないんです、実際、生まれた後に殺すのが、あまりにも忍びなくて・・・流産させようとして亡くなった母親も多くいるんです」

「どうせ、死なすつもりだったら、エッチしなきゃいいじゃん」

Kは驚いた顔で俺を見ると、

「そんな事でもなきゃ、精神に異常をきたすような極限状態にある人間に、今の時代の人間が、あれこれ言えるわけがありません!」

と叫んだ。

Kの迫力に俺はたじたじになった。離れた席から、こっちを見ている奴がいる。

「先輩、すみません、興奮しちゃって・・・」

「また、立ちあがって、どっかに行っちまうかと思ったぜ」

俺はKが意外に男っぽいのをひしひしと感じていた。

「K、お前、彼女と結婚するんか?」

Kはちょっと考えて、

「先の事は分かりませんが、先輩、僕には、Sを絶対、幸せにしなきゃならない義務があるんです」

俺はますますKを好きになった。

・・・終わり

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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