中編5
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旧館

よかったら想像しながら読んでください。

ある地方の女子大生の話ですが、梅雨入り時の話です。

とても仲のいい女子大生が二人。

一人はオカルトをまったく信じないA子で、もう一人はオカルト好きのB子(好きなだけで霊感がない)という二人だったそうです。

色々と二人でサークル活動や旅行など行っていましたが、卒業旅行ということでオカルト好きの子(B)がいわゆる曰く憑きの宿に行こうと(A)を誘ってきたそうです。

AはBがそういう所が好きなのは知っているので反論もなく、旅行に行くことを決めたそうです。

新幹線や電車ではいけないのでレンタカーで三時間かかる宿に向かったそうです。

その車内での話しですが

A「今から行くところなんだけど、結構古くからやっている宿で、300年ぐらいになるのかな?老舗の旅館なんだけど、

この曰く憑きっていうのが、幽霊だけじゃなくて妖怪もでるんだって!!面白そうじゃない?」

B「幽霊だけじゃなくて、妖怪ってめずらしいね。どんな妖怪がでてくるの?」

A「ネットとかで調べてみたんだけどなんの情報もないの。でも出るって情報だけはいっぱいあるんだけどね~」

そんな話をしている間にぽつぽつと雨が降り始め宿につくころには大雨になったそうです。

到着して四階にある部屋に通された二人ですが、Aが案内してくれた中年の中居さんに妖怪の話を聞いたそうです。

A「見た感じ幽霊が出そうって雰囲気ないんですけど、ここってよく出るんですか?」

突然の質問ちょっと驚いた顔をして苦笑いしながらこう答えたそうです。

中「お客様たちのような目的でこの宿にいらっしゃる方はたくさん来られましたが皆さん、がっかりした顔で帰っていかれますよ。」

と言い、中居さんは部屋を後にしました。

B「てさ、残念だったね。普通に卒業旅行楽しもうよ」

A「甘い。従業員はあっても無い。って言うに決まってるでしょ。無いって言われたら逆にわくわくしてきた~他の従業員さんにも聞いてこようっと」

と言い残しAは部屋を出て行きました。

ひとり残ったBは雨で濡れてしまったので先にシャワーを浴びたそうです。

曰く憑きの旅館と言うこともあってか、シャワーを浴びている最中、いつもならまったく感じないのに全身を見られているような視線を何度も感じたそうです。

シャワーから出たのと同時ぐらいにAが笑顔で帰ってきました。

A「やっぱり、ここでるらしいよ」

B「どこで聞いてきたの?旅館の人?」

A「従業員は教えてくれないので、旅館の近くの団子屋さんのおばあちゃんに聞いた」

B「あんた、誰とでもすぐ仲良くなるからね~

どんな話きいたの?」

A「出るには出るんだけど、ここじゃないの」

Aは窓を指差し、

A「あそこに古い建物みえるでしょ?あそこだって。で、今いる旅館は新しい建物であそこに見えるのは古い旅館。いわゆる旧館ってやつね」

B「普通は旧館を壊して新しい建物作るんじゃないの?」

A「同じこと聞いたんだけど平将門よろしく、壊そうとしたら作業員が亡くなったり、機械が誤動作したりするもんだから結局壊さなかったんだっ」

B「ふ~ん、でどうするの?聞くまでも無いけど。」

A「もちろん、行くに決まってるでしょ。せっかくここまで来たのに行かないほうがおかしい」

Bはお風呂場で感じた視線が気になりましたが、Aと一緒に旧館に行くことしたそうです。

近くの雑貨屋でライトや傘、雨ガッパ等を購入し、お店の人に旧館の場所を聞いて、夜の12時を過ぎた頃、車で旧館に向かったそうです。

雨は小降りになりながらも、しとしと、と降り続いています。

Bはさっきの出来事を話そうか迷っていましたが、言ったら余計面白がられると思い、言わなかったそうです。

そうこうしているうちに旧館まで辿りつきました。

A「うわー雰囲気あるな」

B「間違いなくでるな。ここ」

その旧館はおそらく築100年以上はする昔ながらも小学校の分校並に大きい旅館でした。建物にはあらゆる方向から草が絡みついています。

三階建ての木造で、玄関先には立ち入り禁止のロープが張られています。

もちろん玄関には鍵がかかっているので開きません。

B「どーするの。玄関開いてないけど」

A「大丈夫、大丈夫。大概こういうところは裏口か窓が壊れているものですよ~」

と、ライトを照らしながら裏にまわってみると、裏口があり、ノブを回すと鍵が掛かっていません。

B「ほんとだ。開いてる」A「でしょ。いってみよ~」

ドアを開けて、目に飛び込んできたのは昔は大勢の客のご飯を作っていたであろう広い台所でした。

なべや皿、包丁などが散らばっています。

A「すごい埃っぽいね。

そういえば、この旅館のどこに出るの?妖怪だっけ?」

B「おばあちゃんに聞いた話だと三階にある宴会場だって」

B「三階までいくの?建物自体大丈夫かな?床とか抜けないかな」

A「大丈夫じゃない?とりあえず行ってみようよ」

台所を抜けると奥に続く長い廊下に出ました。廊下の横はふすまが並んでいます。

AとBは並びながら、廊下を歩いているとBが

A「なんかさ、今すごい視線を感じるんだけどBは感じる?」

B「は?マジで!あたしまったく感じないけど。。。Bって今までそんなこと言ったことあったっけ?」

A「ない。てっゆうかさっきの旅館でも感じたんだ。Bに言ったら面白がられると思って言わなかったんだけどね」

B「Aがそう言うってことはやっぱりこの旅館には何かいるって可能性大だな」

Bは怖がりながらも、好奇心のほうが強いのか宴会場を目指したそうです。

上に上がる階段を見つけ、二人並んで上っていきますがあがるにつれて視線が多くなってきている気がしたそうです。

いつもなら心霊など信じないAですがさっきから感じる視線に怖くなり、「戻ろう。戻ろう」といったそうですが、Bが「もうちょっとだけ。もうちょっとだけ」と言い結局、宴会場まで辿りつきました。

ふすまは全て閉じており、中は見えません。

ふすまの上に(宴会場)と書かれた、札が下げられています。

B「やっと着いたね」

A「着いたから帰ろ。開けたら絶対まずいって。

ね、帰ろ!」

B「大丈夫だよ、何もでないって。せっかくここまできたんだから開けずに帰れないよ。Aが怖いんなら一人でも見に行くよ」

そう言ったBはAが止める暇もなく、宴会場のふすまを開けたそうです。

開けた先は、がらんとした広間が広がっているだけで何もいません。

B「ほら言ったでしょ。何も起こらないって。

結局ここもガセネタか~」

と言いながらBは中に入っていきます。

Aは中には入らず、Bを入り口から眺めていたそうです。

Aは先ほどまで痛いほど感じていた視線がふすまを開けた瞬間、無くなったことに気づきました。

気づいた瞬間、宴会場の奥でBの悲鳴が聞こえました。

Aは入るのを躊躇いましたが勇気を振り絞り、中に入り、Bを探しました。

Bは広間の奥にある部屋でがたがた震えていました。

A「どうしたの?大丈夫?」

これ異常ないほど震えている手であるところを指差しました。

指差したところは障子。その障子の全てに穴が開き、そのすべての穴から赤黒く腐れ落ちたような目がBを覗いていたそうです。

怖い話投稿:ホラーテラー タツさん  

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