中編3
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おじさん

これは、私が大学生の頃に、地元に帰省した時に体験した話です。

実家は九州の田舎にあり、久しぶりに会う友人達と、毎晩のように友人宅に集まり酒を飲み、近況報告と思い出話に花を咲かせていました。

田舎なので友人宅まで距離があり、移動手段のない私はいつも、友人に車で迎えに来てもらっていました。

盆休みも半分ほど過ぎると、集まる人数も減るので、その日は銭湯に行って、どこかで夕飯を食べて解散しようということになりました。

夕飯を食べ終え、一番遠い私の実家へ先に送ってもらいました。

「今日はここでいいよ。」私は大通りに面した小さな公民館の駐車場で降ろしてもらいました。

そこから実家まで徒歩7分程かかる狭い上り坂の道を、その間、外灯は2つしかないので、大半は月明かりを頼りに歩いて帰りました。

久々に帰る故郷でも、昔さんざん走り回った道ですから、多少暗くても全く不安はなく、むしろ頭の中は、友人達と過ごす楽しい日々でいっぱいでした。

友人の車を見送り、坂を上り始めて1つ目の外灯が見えました。

近づいていくと外灯の向こうから坂を下って来る人影が見えました。

私より先に外灯を通過したその人は、近所に住んでいる親戚のおじさんでした。

逆光で表情はわかりませんでしたが、体系と身なりで当人だとすぐにわかりました。

そもそも人口が少ない為、地域でお互い顔を知らない人なんていません。

ボサボサの髪に不精髭、白いTシャツに青いジャージを履き、ポッコリと出た腹で、その人だとすぐにわかります。

すれ違いざまに、「こんばんわ」と声を掛けました。

無反応なおじさん。

私だと気付かなかったのかな、夜も遅いし寝呆けてるんじゃないか、

と勝手な妄想はしましたが、さほど気にも止めませんでした。

明くる朝、寝不足な私の存在に気付かないかのように、バタバタと家の中を走る家族。

寝呆け眼で居間へ行き朝食を食べていると、母親がひとこと。

「今日はお通夜だから、夜は留守番してて。」と。

「今日も飲みに行くから無理だよ。誰の通夜?」

「公民館の前に住んでた親戚のおじさん。覚えてる?あの不精髭で小太りの。昨日の夜に亡くなってね。ガンだったのよ。あなたもタバコは控えなさいよ。」

私は母親が何を言っているのかわかりませんでした。公民館の前に住んでる親戚のおじさんは一人しかいません。

「意味がわかんないんだけど。髭のおじさんなら昨日帰り道で会ったよ。別の人?」

私の話を聞いた家族は一様に、「変なこと言いなさんな。そのおじさんは、だいぶ前から遠くの病院に入院してたんだから。あり得ないよ。」と。

その場では、私の見間違いだということになりましたが、家族に確認したところ、おじさんと同じような容姿の人は近所には居ないのでは、ということでした。

その夜、留守番を弟に任せた私は、例の如く友人宅へ。

「昨日、飼い犬が死んじゃった。」と、遅れて帰省した友人の話から、前日私が体験した不思議な話をしました。

「今日通夜だから、この辺には居るはずのない、親戚のおじさんに会ったんだ。不精髭で小太りの人なんて居ないから、見間違いじゃないと思う。」と。

怖がる女友達と、家族と同じ反応をする男友達とは、明らかに違う反応した友人2人。

顔を見合わせ、少しどもりながら友人は、

「さっき、お前を迎えに行った時、外灯の近くを歩いてるおじさん、俺ら見たよ。不精髭で小太りで、あと白い肌着みたいの着てて、青いジャージを履いてた。お前のおじさん、、、?」

あれがおじさんなのか何とも言えませんが、仮に亡くなっていたおじさんだとしたら、

彼は散歩に出掛けて、家に帰る途中だったんじゃないかと思うんです。

すでに亡くなっていることに気付かずに。

昔はよく散歩がてら、坂の上の、私の実家に遊びに来ていましたから。

そう思うんです。

怖い話投稿:ホラーテラー U3さん  

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