大学の、登山サークルの副リーダーA君は、普段バカな事ばかり言っているけど、いざとなると本当に頼りになる人で、私は大好きでした。
冬に、ある山へ登頂した時の話です。
頂上まで後少しと言う所で、私はちょっとした石につまづき、そのまま崖から滑落してしまいました。
幸い命に別状はなかったのですが、足首を強くひねってしまい、立つこともやっとな感じになってしまいました。(後に骨折と判明)
その山の登頂計画は、頂上まで行き、頂上で夜を明かして下山する予定だったのですが、とてもそんな余裕はありませんでした。
サークルのリーダーが判断を下しました。
「Aとユリ(私の名前)は、二人で下山しろ。俺たちパーティーはこのまま頂上を目指す。」
A君は嫌な顔一つしないで「了解!」と言うと、私の荷物を全て持ってくれました。
「立てるか?」
私は、自分がすごく腹立たしくて、A君に申し訳なくて、ただ泣いてしまいました。
「泣いてる暇なんてないぜ!日が暮れる前に降りるぞ!」
私は頷き、肩を借りて少しずつ山を降りて行きました。
下山を始めたのですが、私の足首が、思ったより悪く、全く進みません。
どんどん時間は過ぎて行き、あたりは薄暗くなってきました。
「今日中に下山は無理かもしれないなあ…
どこか適当な所でテントはって夜明けを待つか。」
A君の判断に従い、少し行った広めの場所で、夜明けを待つ事にしました。
A君は、テキパキと1人でテントを作って、タキギを集め火をおこしてくれました。
そして私の所へ来て、
「足、痛むか?ちょっと見せて見ろ。」
と、私の足を気づかってくれました。
私の足首は、普段の二倍くらいに腫れ上がっていました…
「これはダメだ!折れてるかもしれないな…ちょっと待ってろ、雪を持ってきてやる!」
A君はそう言って、雪を探しにいってくれました。
私は、下山したら、私の想いをA君に伝えようと、この時心に決めました。
A君が、雪を探しに行って30分くらいたった時です。
焚き火の向こう側に、黒い影が見えました。私は、A君が帰ってきたと思い、座ったまま声をかけました。
「遅かったですね。心配しましたよ。」
しかし返事はありません…
私は、その影を目を凝らして見てみたのです。
それは、本当に影だけでした。
ただの真っ黒い影…
それが、焚き火の灯りに照らし出されていたのでした…続く
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話