短編2
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冬の登山②

黒い影は、ずっとそここに立っていた…

(A君早く帰ってきて)

私は祈った。

すると、林の影からA君の声がしました。

「雪は、なかったよ!」

A君は、済まなそうな顔して私の前まで走ってきました。

私はすぐに、黒い影を指さして言いました。

「影が…黒い影だけが…あそこに立ってるの…」

しかしA君は驚いた様子も見せず、

「ユリにも見えるのか…あの影が…

あれはね、山で事故をおこした人を引き込もうとする影なんだ…

ここにずっと残りたいと思ってると勘違いして出てきたんだな…

朝日が昇ったら行くのにね…

あの影も、朝日が昇ると消えるはずだ。」

そう言うと、動けない私をテントまで連れて行ってくれました。

テントの入口に、A君が持っていたお守りを吊るし、私とA君は、寝ないようにずっと話をしました。

私は、足首の痛みが激しく、聞いていることしかできなかったのですが、A君はずっと話をしてくれました。

幼い頃の話、中学校時代の話、初恋の話…

疲労と痛みと眠気で、意識が朦朧としてきた頃テントの中に微かな光が差し込んできました。

夜が明けたのです。

うっすらと周りが見えてきました。

あの影は消えたのだろうか…

私は隣にいるA君に聞きました。

「影は消えたのかな?」

A君が答える、

「多分ね。でもまだテントの中にいよう。

パーティーの下山に合流して、一緒に降りることにしよう。

それが一番安全だ。」

パーティーは、夜明けと共に下山する予定だから、後2時間もすれば、ここを通るはずです。

私とA君は、テントの中でパーティーを待ちました。

どれくらい時間がたったのでしょうか…

遠くの方からパーティーの声が聞こえてきました。

「おーい、ユリー、Aー、大丈夫かー!」

リーダーの声だ!

私は大きな声で、

「ここにいます!」

と叫びました。

テントの入口から、リーダーの顔がニュッとでてきました。

「おお、ユリ!…

最後まで下山できなかったか…俺の判断ミスだ、ごめんな。

足、酷いみたいだな、ここからは交代でおぶって行くから心配するな。」

私は安堵のあまり泣いてしまいました。

リーダーは、テントの中を見回しながら聞いた、

「ところで、Aはどこに行ったんだ?」

どこって…私の隣にいるじゃないですか…

隣に…

A君の姿は、私の隣から消えていました…

すみません続きます

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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