短編2
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自殺タワー

(俺はもうダメだ…)

ビルの屋上から、はるか地上を見下ろし呟いた。

会社の金を使い込み、人生をかけて買った株は、暴落の一途をたどっていた…

(死ぬ…しかないか…)

俺は覚悟を決め、屋上のフェンスに登ろうとした。

その時、後ろから声がした。

「あのー…死ぬんでしたら、今の気持ちと、最後に残す言葉だけでも、教えてくれませんかねえ?」

振り返ると、そこにメガネをかけた貧弱そうな男が立っていた。

ノートとペンを持ち、俺の事をじっと見てる…

俺は、メガネ男の態度に腹が立った。

今、死のうとしている男に、普通そんな言葉をかけるか?

「ふざけるな!お前、どういうつもりだ!」

怒りにまかせて怒鳴ると、メガネ男は言った

「ご、ごめんなさい…僕小説家を目指してて…自殺する人の気持ちを知りたかったんです。」

俺は呆れた…

コイツは、自殺する人が現れるまで、ここでずっと待ってたのか…

「お前なあ!」

俺が文句を言おうとした瞬間、屋上への入口のドアがバンッと開いた。

ドアから出てきたのは、備員のおっさんだった。

「おい!何をしている!」

警備員のおっさんは、青い顔をして叫んだ。

俺は、死ぬ気力も失せて、警備員のおっさんに言った。

「今、俺は、ここから飛び降りようとしたんだ。だが止めた。もう止めたよ…すまなかった。そこのメガネ男に…そこの……あれ?」

俺が指さす方向にメガネ男はいなかった。

警備員が言う。

「メガネ男って、小説家志望の男でしょう?その男も、ここから飛び降りたんだよ…

あんた…助けられたんだね。」

警備員のおっさんは、優しい口調で話た。

「あんた…死んで何になるんだ。金か女か知らないが、死んだら終わりなんだよ。」

俺は、警備員のおっさんにもたれ掛かるようにして泣いた…

と、その時、屋上への入口のドアがバンッと開いた。

ドアからあらわれたのは、年老いた警察官だった。

「おい!お前!こんな所で何をしている!」

何って…自殺を…

あれ? おっさんは?警備員のおっさん何処へ行ったの?

警察官は聞いてもいないのに語り出した。

「人間年老いたら死ぬんだ…今死んで、どうなる!

全くいまの若いのは…」

と、その時、屋上への入口のドアがバンッと開いた…

疲れきったサラリーマンが出てきた…

サラリーマンが何か語り出す前に、俺は逃げ出した。

ありがとうと呟いて

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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