中編4
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通勤電車

いつも俺は電車で通勤してるんだけど、今は車通勤に変えた。

その電車通勤を止めさせた思い出したくもない日の事を書こうと思う。

その日も同じ駅で乗り換えてホームでいつもの電車を待ってたんだけど、何かいつもと雰囲気が違う気がした。

電車通勤の人なら分かると思うけど、毎日同じ時間の電車に乗る人って大体決まっていて、結構同じメンツが毎日いるんだよね。

その日もチラホラといつものメンツがいたんだけどその中に明らかに挙動不審な人がいたんだ。

その人は夏なのに白い長袖セーターにデニム。デニムは分かるけどセーターって。

多分20代ぐらいの男性だったと思う。

その人がホームを行ったり来たりしてるんだよね。

しかも横じゃなくて縦に。

電車と平行じゃなくて壁から黄色い線の外、線路ギリギリまで行ってはまた壁に戻る。

何かをためらってる感じ。

俺はまさか… と思ったんだけど、話しかける勇気も無く、なんならちょっと距離をとった。

周りは全く我関せずで携帯やら読書をしてる。

その時。

いつもの様に勢いよく電車がホームに入ってきた。

俺はその人を見ないように電車を見てたんだけど突然

「あぁ―――――――」

って声が聞こえた。

何か、物を拾おうとしたら持ってる物も落とてしまった時に出す様な声。「あ―もう!」の「あ―」の部分が伸びた感じ。

俺は思わずその声の方に向いた。

挙動不審なそいつは「あ―」と言いながらホームを歩き、黄色い線を越えて線路に飛び込んだ。

と言うよりまるで階段を降りる…何か段差を降りる様に平然と線路に降りた。

直後その上を電車が通過する。

俺は「うわっ!」っと叫んでしまった。

回りの人が「うるせ~な~」と俺を見る…。

え?

普通に電車は止まりドアが開き、乗客が降りてくる。

「???」

「今飛び降りたよね?人。」

この後周りのリアクションを見て、初めて「この世のものではない人」だと思った。

今までそういう経験はなく俺は霊感がない。と思っていたが遂に見てしまった。のか?

でもかなりリアルな人だったな…

顔色とか雰囲気がまるで人で、確かにそこに居た…

多分その時は俺が挙動不審だったと思う。

軽く放心状態だったが仕事を休む事は出来ないしこんな理由じゃ休める訳ない。

かなりの心拍数のまま取りあえず俺はその電車に乗った。

この後更なる恐怖があるとも知らずに…

そして電車に乗ったんだけど何故かその日はいつもより空いていて、座席が全部埋まらない位の乗客しかいなかった。

俺は取りあえず席に座り落ち着く事にした。

あれは何だったのか…

疲れてるのかな…

と、疲れてる訳ないが無理矢理にでも理由をつけ、落ち着きたかった。

段々と、周りのいつもの景色を見れる位の落ち着きを取り戻した。

その間も電車は1駅2駅と進み毎駅で何人かの乗客が降り、乗ってくる。

3駅めに着く頃には大分落ち着いていた。

乗客が降り、乗ってくる…

白い長袖セーターにデニムの人が乗ってきた。

「っ!」

今度は声には出さなかったが俺はとっさに目を反らし頭の中をフル回転させた。

「何で!?」

頭がぐるぐる回り汗が吹き出してきた。

とりあえず見ないように、でも何か危害を加えられるかもしれないから視界の端に捉えていた。

そいつは車両内を歩き回っていた。また行ったり来たり。

連結部から連結部までを

「ペタペタペタペタ」

と気味の悪い音を出しながら歩いている。

「なんなんだよ!」

心の中で叫んだ。

たださっきと何か違う。 さっきは

「あ―――」

だったが今度は

「ははははははは」

と不気味な声を出している。

笑い声ではない。

平仮名の「は」を連続して言ってるだけの無機質な声…

俺の前を行ったり来たりしている。

俺は下を向いて寝てる振りをしながら薄目を開けていた。

「早くどっかいってくれ!」

心の中で叫び続けたが

「ペタペタペタペタ」

「はははははははは」

…周りの乗客はまるで無関心。いや、多分俺にしか見えてないんだ。

「ペタッ」

足音が止まった…

下を向きながら薄目を開けると目の前に裸足の足が立っていた。

俺は思わず顔を上げてしまった…

よく見ると足の爪は全部無く泥だらけ。

白い長袖セーターは所々に赤い染みがあった。

顔は…

目が真っ黒。

いや、全部黒目みたいな感じ。

歯は全部無く、俺を見下ろしながらニタリと笑っている。

俺は

「全部夢だ!早く覚めてくれ!俺が何をしたっていうんだ!」

と心の中で必死に叫びながら目を強く瞑って祈り続けた。

するとそいつは

「……ぬ……し…ね」

「しぬ…しね……」

「しぬしねしぬしねしぬしねしぬしねしぬしねしぬしねしぬしねしぬ」

俺に呟いた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名係長さん  

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