中編3
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幽霊のバラード

私は鼻歌を唄うクセがある。

その日良いことがあろうが嫌なことがあろうが、無意識に唄ってる。

ある日のバイト帰りも、何気なく鼻歌混じりに歩いてた。

帰り道には割と大きい公園があって、そこを横切る形で家まで帰るのが一番早く、その日もそうした。

夜だから人は誰もいず、少し気味が悪いから、

そこだけは鼻歌をやめて早足で行くんだけど、

その日は何故か、

親子連れが遊んでたからあんまり怖くなくて、

普通に歩いてた。

今思ったら、

そんな時間に親子が

遊んでたら、

逆に不気味なのだけど。

小さい男の子が、

きゃっきゃっと楽しげに笑い声をあげてて、

お母さんと思われる女性もその様子を見ている。

何となく微笑ましくて、私は鼻歌を唄いながら、親子が遊んでいる

ブランコの側を通る。

『すみません。』

ふいに女性の方が、

私に声をかけてきた。

私 『はい?』

女性『今の曲、いい曲で すね。』

そう言って女性は笑顔を見せてきた。

一瞬何の話か理解できず呆然としたけど、

『あっ…鼻歌…?』

そう訪ねると女性は

優しい笑顔で頷いた。

私が唄っていたのは、

そんなに新しくはなく、しかもいまいち

売れることのなかった

ある歌手のバラード。

男の子『どうしたの?』 女性 『このお嬢ちゃん がね、綺麗な曲 唄ってたの。』

そう言って女性は再び

私に視線を向けると、

『良かったら少しだけ歌ってくれない?』

と言ってきた。

言い方は悪いけど、

あまりに唐突だったので少し頭のおかしい人なのかと思った。

でも男の子の視線まで

私に向けられたから、

さすがに逃げ出すのも

どうかと思ったので、

『サビしか歌詞ちゃんと知らないけど…。』

そう言って、二人を前に私は歌い始めた。

多分周りからすると

私の方が不審者だったと思う。

はっきり言って

かなりヘタクソだけど、女性は頷きながら

私の声を聴いていた。

ほんの12、3秒の

私ごときの歌を聴いて、『ありがとうね。』

女性は礼を言ってきた。

私 『この歌好きなら、 あんまり売れてな かったから在庫と かあるかわからな いけど、買った方 がいいですよ。私 なんかの歌じゃ全 然…』

女性『いいんですよ。ご めんなさいね?こ んな時間に呼びと めたりして。』

何だかよくわからない

ままだったけど、

いい加減その場を

離れようと思って、

『じゃあ私はこれで…。また会ったときはよろしくお願いします…。』

何がよろしくなのかも

わからなかったけど、

社交辞令くらいのノリで挨拶した。

『またね。』

男の子が笑顔で言った。私は笑顔を返して、

そそくさと公園を出た。その後親子が何かを

話していたようだけど、よく聞こえなかった。

後から知ったんだけど、公園の近所で、

男の子が事故で

亡くなってるらしい。

でもその母親はちゃんと生きてるって聞いた。

あの女の人、

男の子が天国に

行けるように、

子守唄にでも

したかったのかな。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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