中編3
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胎児

看護士をしていたので様々な怪我をしてくる患者さんを見てきましたが救急の患者さんで妊婦さんが破水したということで病院に運ばれてきました。

容態はとても悪く、母子共に危険な状態でした。

すぐに胎児を分娩するため、手術室に運ばれ帝王切開で胎児を取り出す手術が行われました。

母親は苦しみながらも子供を無事出産するため今にも気絶しそうな体で頑張っていました。

悪いことに胎児は逆子で足から出産することになったのです。

通常であれば出産途中で呼吸ができなくなって死んでしまう可能性があるので一旦、おなかの中に戻して頭から出すような方法が取られるのですが一刻も争う状況なので、切開を広くし、足から一気に胎児を取り出す方法にしました。

母親はあまりの激痛のためか気を失っており、医者の手で胎児を取り出します。

足が出て、太もも、お尻、胸、徐々に胎児の体が出てきて自分達も

「もう少し、もう少し頑張れ」と願いながら先生がやっとの思いで胎児を取り上げました。

その瞬間、手術室に「ヒィ」と小さな悲鳴が上がりました。

口、鼻、耳、五体満足に生まれてきたのに生まれてきた胎児には目がひとつしかなかったのです。

それもちょうど顔の真ん中にぽつんとひとつ。

妖怪の一つ目小僧を想像していただければわかるかと思います。

その場にいた全員があまりの衝撃に身動きひとつすることができず、取り上げた医師もただただ呆然とするばかり。

その状況を打ち壊したのは取り上げたばかりの胎児でした。

大きな泣き声を上げ、生まれてきた喜びでも表すように大きな声で泣き始めました。

その声で全員が我に返り、その胎児を見つめていた矢先、取り上げた医師がその子の首を絞め始めました。

自分は「何をしてるんですか!!殺す気ですか!?」

医師「この子に責任はない。しかし、人間社会でこの子もこの子の親も幸せになると思っているのか?一つ目の子供を母親が育てると思っているのか?一つ目の子供を産んだと一生言われ続けるんだぞ!!お前だったら育てきれるのか!!親の為にも子供の為にも殺さないといけない。」

そういって医師は泣いている胎児の首を絞め、胎児は苦しそうな声を上げながらこの世から旅立っていきました。

通常であれば、死産でも母親などには胎児を見せますが医師の判断の元、胎児を親に見せることはなく亡くなったことを告げると「赤ちゃんを見せて!赤ちゃんを見せて!

」と叫ぶ母親には事実は隠し、胎児は見せないまでも父親には事実を話し、納得していただき母親を説得してもらいました。

あとから聞いた話ですがいわゆる奇形児が生まれた場合、医師が判断し殺すことができるそうです。

しばらくして病院をやめ、他の仕事につきましたがふとした瞬間にあの状況を思い出します。

今度こそみんなと同じように可愛い赤ちゃんで生まれてくることを願ってやみません。

乱文、雑文失礼しました。

怖い話投稿:ホラーテラー ナイさん  

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