短編2
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渡したかった物

僕は、高校の教師をやっていたのですが、その時の話です。

教師になって、3年目の夏、僕は毎日ある夢を見るようになっていました。

その夢とは、クラスの女生徒(Y子さん)が、僕に何かを渡そうとする夢です。

両手の手のひらの中に、大事そうに持っている物を僕に差し出すのですが、それが何なのかハッキリ分からぬまま目が覚めるのです…

僕がY子さんに、特別な感情を抱いていることは無く、むしろ目立たない存在のY子さんが、何故毎日のように夢に出てくるのか、不思議でした。

それは、とても暑い日の夜でした。家で夕飯を食べていると、電話がかかってきました。

それは、教頭先生で、あわただしく、僕に言います。

「君のクラスのY子さん…今さっき連絡があったんだが…どうやら自殺をしたらしい…

電車に身を投げたそうだ…

とにかく君も学校に来なさい。」

自殺?一体なぜ?

僕は飛ぶように学校へ行きました。

学校には校長と教頭、それに警察関係者らしき人がいて、僕が来るなり、3人から質問責めに合いました。

「何故自殺したのか」

「担任は何も気付かなかったのか」

「イジメはなかったか」

僕は知ってる限り、全てを話ました。

Y子さんは、とてもおとなしい性格で、目立つ子ではなかった事、イジメは僕の見る限りでは確認されなかった事…

くたくたになって、家に帰り着いたのは、深夜になっていました。家に帰るなり、疲れから僕はすぐに寝てしまいました。

そして、いつもの夢を見たのです…

Y子さんは、いつものように僕に何かを差し出します…

しかし、いつもと違うのは、体が…まるでボロ雑巾のようにズタズタで、頭が半分無いのです…

必死で僕の方にヨロヨロ近づいて、両手のひらの中の物を、僕に渡そうとする…

僕も手を伸ばした。

Y子さんは、僕の手の中にそっとそれを置いた…

目だった…

目の玉が、手の上から、じっと僕を見つめていた…

悲鳴と共に目が覚めたのでした。

翌日、Y子さんの遺書が見つかりました。

イジメに耐えきれない、誰も助けてくれない、先生も親も何も気づいてくれない…

遺書には、そう書かれてありました。

その年に、僕は教師を辞めました。

教え子が、(もっとちゃんと私を見て)と、自分の目を渡そうとしてるのに、それすら気づいてやれない人間が、教師を続けられる訳がありません。

こんな悲劇を二度と繰り返さないように…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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