長編11
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某霊園にて

最近、このサイトを知った者です。

私自身、正直お化けやそういった類のものはあまり信じておりません。

そんな私が怖い話をするのは端っから矛盾しているのかもしれません。

…。

前置きはこんぐらいで。

大した怖い話ではありませんが…話します。

〇葉県某所にある〇柱霊園(もしくはそのへんの近くの霊園)に肝試しに行きました。

当時、私は中学二年くらい。

先輩の車(確かハイエースとセダン)で男女合わせて10人程度で現地に向かい、着くとすぐにグッチーで3、3、4の班に分かれた。

怖がりだった私は先輩と同じ班になることを強く願っていたが、運の悪いことに同世代の女子3人と一緒になってしまった。

霊園は二つに分かれており、坂を上り二つ目の墓地を一周してスタート地点(一つ目の墓地の入り口)に戻ってくるというのが肝試しの手順だった。

一組目に先輩の班が肝試しに行き、ニタニタしながらすぐに入り口に戻ってきた。

戻ってきた先輩たちはかなり落ち着いている様子で「大して怖くなかったわー」と言っていた。

その姿にほっとした私は、「じゃ次は自分らが行きます」と言い、私が先頭で中へと入っていった。

間もなくして、坂を見つけた。坂のふもとには焼却炉のようなものがあり、瞬間、不気味に思えたが、この坂を上って戻ってくるだけかと思うと幾分気が楽になった。

坂を上りきると、私たちの目の前にたくさんの小さなお墓が現れた。

どの墓もほとんど同じくらい5~60センチ程度の高さで、坂を上る前の墓地の景色とは違い、墓地はきれいな真四角でとても整備されていた。

そのあっけなさに拍子抜けしたせいか、さっきまでビビリまくっていた自分が馬鹿馬鹿しくなった…。

と、墓地の奥(私が立っている位置から丁度対角線上)に大きな一本の木を見つけた。

何故だかわからないが、不自然だと感じた私はその木に向かって歩いていった。

ここぐらいにくる時には怯えてた女子もキャッキャするぐらい余裕を取り戻していた。

その大木にたどり着いたところで、どうするかーとみんなに尋ねると、何でもいーというそっけない返事が返ってきた。

私「じゃ戻るか」

と、来た道を戻ろうとすると足元がジャリっと鳴った。

ん?と思い地面を見ると来るまでは暗くて気付かなかったが、一本の砂利道があった。

その砂利道はすーっと一本道になっている。幅は1メートル程、歩く分には狭くも広くも無い。

その先端はどうやら出口らしい。私はこっちからでも戻れそうだと女子たちに言い、その砂利道の先へ向かった。

砂利道が終わると目の前に下り坂が現れた。

上ってきた坂がアスファルトだったのに対して、その下ろうとしている坂はただ雑草をむしった程度の土の坂だった。坂の右側には古い物置小屋みたいのがいくつも続いていた。人が住んでいる様子というか、そういうためのものじゃないとすぐにわかるほどボロくて汚かった。

まーいーかと、おもむろに歩き出すと、足元からぼろぼろと土がこぼれていく。

思ったより斜面は急で不安定だったが、大した長さではないのでそのまま下り続けた。

後ろから続いてくる女子たちは案の定、また「きゃー」とか「こわいー」とか言い出した。

(めんどくせー)と思いながらも構わず下っていると後ろからドンと押された。

振り返ると女子たちが固まっている。どうやら、雪崩式に滑り落ちてきたらしい。

おいおいおい…と私は言いながらもちょっと嬉しかった。女子たちはごめーんと言い、4人ともほっとして笑い合った。

その時、

「バコォォォン!」

と大きな音がなった。

一瞬にして空気が凍りついた。動きたいが、誰も動けない。

私「何だよ、おい今の!」

女子たち「やだやだやだ!」

音の聞こえたのは私の左後ろあたりだ。恐る恐るその方に振り返ると誰も居ない。

当たり前か…と納得しかけたがすぐに取り消した。音の原因はおそらくこの物置小屋に何かしらが強く当たったことだ。いや間違いない。薄っぺらい小屋の鉄だかアルミだかの壁を思い切り蹴り飛ばしたような音。

問題は誰がその音を出したかだ。一番最初に思い浮かんだのは墓地の入り口にいるはずの先輩たち。

きっと私たちを脅かそうと思いやったんだ。すぐに確信した私は、それを証明する方法を思いついた。

それは、女子たちと私の4人で別々の先輩の携帯に同時に電話するということ。きっとまだ近くで笑いをこらえながら様子を窺っているに違いない。私の作戦にすぐに女子たちは納得し、4人で一斉に別々の先輩に電話をした。

「プルルルル…プルルル…プルル」

どこからも音は聞こえてこない。間もなくして、

先輩A「もしもし」

私  「えっと…どこにいます?」

先A 「あぁ?さっきんとこ」

私  「まじすか……いや今ちょっとトラブルってか、何かいきなりでかい音がして、A先輩たちかと思ったんで…」

先A 「知らねーよ。何、音ってどんなん?」

私  「いやぁ…」

携帯のスピーカーからは他の先輩たちの声も聞こえてくる。多分、女子たちが掛けている先輩だろう。

どうやら見る限り、女子たちも全員他の先輩と話している…。

私 「と、とりあえず、すぐ戻ります。話は後でいーすか?」

先A「あ、そう」

私 「切ります。失礼します」

電話を切ると不安が強くなった。

(無理無理無理ムリ……)

パニくりながらも私の頭は何らかの答えを出そうと必死だった。さっきの場面が自然に思い浮かんでくる。

でかい音。

俺の背後。

左後ろ。

距離は近い。

かなり近い。

遠くても3メートル以内。

それを計算しても、坂を下りきるまでは少なくとも10メートル。

誰かが蹴り飛ばして、姿をくらますのは多分不可能…いや、もしかしたら…。

俺は後ろを見ていなかった。

どれくらい?

長くて10秒(音が鳴る前)。

10秒あれば上ってこれるかも。

でも(音が鳴って)振り返ったのは…わかんねーわかんねー…降りる音なんて…わかんねぇ…。

あ…。

そっか。

ちげーよ。

全部関係ねー。

私は本当に息が止まりそうだった。

確かに俺は後ろを向いていた。

そう、俺だけは。

でも女子たちは俺と向かい合っていたわけだから…、

そういうことだ。

俺の後ろには、居なかった誰も。

だから…。

音は、

中から。

最悪の展開だ。

最悪だ最悪だ最悪だ。

こんな小屋に人がいるわけねー。

私  「行こう、降りよう」

女子A「ねーA先輩じゃ無かったの?」

私  「うん」

女子B「B先輩も違うっぽい」

女子C「じゃ…誰なの?」

私  「とにかく…戻ろう」

女子A「やだぁ!超無理ぃ!」

女子B「まじなの?まじで先輩たちじゃないの!?」

女子C「あたしも無理!先輩たちに来てもらおうよ!」

私  「はぁ!?来るまで待てねーよ。てかここに居たくねーし」

女子C「じゃーさっきの坂まで戻ろうよ」

私  「だからそれでも遠回りだろ!ここ下ればすぐに着くよ!」

女子C「無理、あたしは絶対無理!」

私  「何でだよ!」

女子A「あたし先輩に電話する!」

私  「いいから行くんだよ!!」

限界だった、耐えられなかった…その時、

バコォォォン!!

再びあの音が鳴った。

私は走っていた。

滑り、ボロボロとこぼれ落ちる土の斜面を必死で。

前のめりで顔面から転びそうになるのをギリギリで耐えながら。

何かを叫んでいたかもしれないし、何も叫んでいなかったかもしれない。

下りきっても勢いは落とさず必死に走った。

100メートル程行ったところで、はっとして振り返った。

誰も居ない。

堪らず叫ぶ。

私「おい!!」

返事は返ってこなかった。

誰も下ってきてない。

俺だけだ…。

待つか、

いや、無理だ。

入り口はきっともうすぐだ間違いない。

行こうと決意し、気合を入れるつもりで深く息を吸い込み前を向きなおした。

走ろうとしたところで、足が止まった。

オレンジのような赤いような直径15センチほどの丸い塊が前方・高さ共に5メートル程のところを勢いよく横切った。

嘘だ…ありえねー。

腰が抜けそうだった。

本当に。

私は精一杯、理性を保とうとして頭をフル回転させた。

今のは幻覚だ。

俺はパニくったせいで、変なイメージを具現化しちまったんだ。

実際には見えてない。

勘違いだ。

何かしら、アドレナリンだかホルモンだか何だか知らねーがそういうのが大量に分泌されて変な幻覚を見たんだ。

それが一番納得いく。

テレビだか何だかで聞いたんだそんなこと。

そんなことはどうでもいい。

どうしよ。

俺が一人で逃げたからか?

何で俺なんだ!

戻る?

いやだ。

無理だ。

泣きそうだった。

でもそんな余裕はどこにも無い。

私は再び走り出した。

間もなくして入り口が見えた。

入り口に戻り私はバカみたいにやばいを連呼した。

そして必死に事情を話したが、先輩たちは私の話よりも、女子たちを置いてきたことを一丁前に咎めた(まぁ当たり前だけど…)

とにかく、迎えに行こうと話していると女子たちが戻ってきた。

女子Aは号泣していて女子BとCはそれをなだめているようだ。

たどり着いた女子たちに私は散々愚痴られた。

私は謝りながらもどうやって戻ってきたかを聞くと、どうやら最初に上った坂を下りてきたらしい。

もちろん、オレンジの塊なんて誰も見ていなかった。

私は全員から散々非難された。自分が逃げたことは確かに悪いけど、言ったことは嘘じゃないと必死に説明したがオレンジの塊の話をしたところで誰も相手にしてくれなくなった。

当然だとは理解できても私は悔しかった。

それまで、私は冗談でもお化けを見た話なんか誰にもしたことなどない。ましてや人魂なんて。自分でもバカらしいと思う。でも見たんだ。

諦めたあと僕は一切口を開かなかった。

その様子に気付いた特に親しいA先輩が言った。

A先輩「どこで見たん?」

私  「さっき話した坂を下りて…確か近くに焼却炉があったっす」

B先輩「あーあったわ」

A先輩「じゃ行ってみよっか?」

私  「ええ!嫌っすよ!まじ、いや無理っす」

A先輩「あぁ?見たんだろてめー!」

私  「いや…」

A先輩「嘘かよ」

私  「嘘じゃないっすよ!」

そんなこんなで全員で行くことになった。

その時はお化けより先輩の方が怖かった。

余談だが、私の先輩は地元では超有名な不良中卒でその代の頭だった人。高校だって一年も通ってない人ばかりの学校だ。地元のヤンキーでその先輩の名前を知らない人はほとんどいなかったと思う。多少年上に絡まれても、その先輩の後輩だと説明すれば丸くおさまった。

話を戻す。

焼却炉に着くとやっぱり怖かった。でも10人で、先輩方勢揃いのせいか全然気が楽だった。

先輩たちは少しもビビらず好奇心たっぷりに辺りを見回していた。

するとA先輩は焼却炉に近づいていく。

私  「てか、何なんすかね、その焼却炉」

A先輩は迷わず焼却炉の蓋を開けた。ひぃっと思ったが何も起こらなかった。

私は怖かったので中を除かなかったが先輩たちは丹念に気が済むまで中を見た後、口を揃えて「何もねー」と言い、A先輩が蓋を蹴って閉めた。

やっぱりこの人は極悪だ。

でも、その時だけは誰よりも頼もしく見えた。

何も起こらなかったので結局また愚痴られた。

嬉しいような、悔しいような。

とにかく、これで用は済んだ。終わった、帰れる。はぁー。

先輩A「何もねーなー、どっか怖いとこ探そうぜ!」

(はぁ??何言ってんだこの馬鹿!もーいいだろ!十分だ。これ以上ここにいて、また何かあったらどーすんだよ)

私  「いやーもう帰りましょうよ」

先輩A「うっせーんだよ鼻毛!」

(何で鼻毛なんだ??)

私  「…すいません」

僕は心身ともにヘトヘトだったが我慢して先輩の後についていった。

私たちはそれからぐるぐると墓地の中を回った。

するとシートのかぶさった車を先輩たちが見つけた。何で一台だけここにあんだ?

すぐさま、A先輩がシートをひん剥いた。

車は黒のセダンだったが何かおかしい…。近づいてみて気がついた。この車は何か燃やされたっぽい痕があった。

僕はまた嫌な予感がしたのでそれ以上近づかなかった。すると他の先輩が鳥居を見つけた。

しかしその鳥居は超急な斜面の階段の先にあった。階段というより、梯子みたいだ。先輩たちは皆、その階段(10メートルくらい、結構高い)を上りきりまた「何もねー」といって降りてきた。

一通りというかフルコースで肝試しをし尽くした私たちは乗ってきた車に戻ることになった。

一番近いからといってお墓とお墓の石畳を通ることになった。

石畳の路は狭く10人一列に歩いて帰った。

私は一番後ろが嫌だったので後ろから3番目くらいで挟まれながら後を付いていった。

丁度、墓地の真ん中くらいに来た時、私の携帯が鳴った。

見るとA先輩からである。前にいんのになんでかなと思いつつ電話に出るボタンを押した。

しかし、電話は鳴り続けたまま出ることが出来ない。

え?なんだこれ?

試しに他のボタンを押してみるがやはり出ることが出来ない。

片っ端からめちゃくちゃに押しても出れない。

堪らず電源ボタンを長押しするが電源も切れない。

B先輩「どした?」

私  「いや、なんかA先輩からなんすけど電話出れないんすよ」

B先輩「貸してみ…マジだ出れねー」

私  「電源も切れないんすよ!」

B先輩「何だこれ」

と言いながらB先輩は蓋を外しサクっと電池パックを抜いた。

画面が消えてほっとしたのもつかの間、私はすぐさま前を歩くみんなを押しのけて半ギレでA先輩に詰め寄った。

私  「何なんすかあの電話!!」

A先輩「はぁ!?」

私  「はぁ?じゃないすよ、何の用すか?てか電話でれねーし、わけわかんねーし」

A先輩「何のことだよ?てかてめー何でキレてんの?」

先輩の声のトーンが一気に低くなった。

私  「いや…キレてないすよ。すいません、本当申し訳ないっす。でも今なんで電話したんですか?」

A先輩「だからしてねーっつーの!」

私  「まじすか?じゃ携帯見せてくださいよ」

先輩は携帯を出して発信履歴を見た、私も一緒に見た。

無かった。

あるはずの発信履歴が。

A先輩「かけてねーじゃん!」

私  「ありえねー…」

私は急いで電池パックを入れなおし電源を入れ、すぐに着信履歴を開いた。

着信履歴にA先輩の履歴はあったが時間が全然違う。

その履歴は集まる前にA先輩と話した履歴だ。

どこにもA先輩の不在着信は無かった。

墓地を抜けた。

私はB先輩に事情を説明した。B先輩も確かにA先輩から掛かってきたのを見たと証言した。

でも、話は私とB先輩の作り場話ということで片付けられた。

帰り道、B先輩は何も無かったが、私は思いっきりA先輩に肩パンされ悶絶した。

まじデビルこいつと心の中で呟いた。

おしまい

※あとがき

まず、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

本当にづらづらと長く書いてすいません。

でも、ここに書いたことはフィクションではなく実体験です。

でも、幾分の脚色が、無駄な部分が多々あるのも事実です。

冒頭に私はお化けなど信じていないというのは、現在は全く見なくなったからです。時々、見たことを思い出すのですが、馬鹿馬鹿しく、自分が作り上げた嘘の記憶だと考えてきました。だから、他人にはあまりそういった体験の話をしませんでした。昨今にいたっては全くです。今回は勢いで…という感じです。

本当に読んでくださった方、ありがとうございました。

ちなみにこの舞台は実際に存在します。あまり行くことはオススメしませんが、行きたい人はここに書いてある情報で行けるんじゃないかと思います。

お疲れ様でした。

怖い話投稿:ホラーテラー のんのんばーさん  

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