短編2
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昨日の事

霊などと言う者は、本当に存在するのだろうか。

死者がそれになるとするなら、1日に膨大な数の霊が誕生することになる。

それに託つけて、ウンチクを垂れる霊能力者という存在。

テレビでよく見掛けるのは、痛風みたいなデブと、妖怪みたいな金髪が、ああでもないこうでもないと話す風景。

それだけで、彼らはどれくらいの金を貰えるのだろうか…

僕が、工場で朝から夜まで働く金の何倍もの報酬を受けとるんだろう。

煩わしいインチキ偽善者が……

これが、昨日までの僕の考え方だった。

同じだと言う人もいるのではないだろうか。

だが、昨日僕が見た事を、霊的な事以外で説明してくれと言われても、僕は出来ないだろう…

昨日は、夜勤だった。僕はいつもと同じ時間、23時に家を出た。小雨が降っていたが、傘はいらないくらいだった。

いつもより肌寒い夜…大あくびをしながら、自転車を走らせていた。

何も変わらない出勤の様子。

異変が起きたのは、最初の交差点を過ぎたあたりからだ。

自転車のペダルがやけに重く感じられるようになった。

(パンクでもしたかな?)

自転車を降りて確認するも、異常は見当たらなかった。

だが、依然として自転車のペダルは重いままだ。

僕は自転車を走らせながら、後ろを振り返った。

そして自分の考えを打ち消してしまう存在を目にした…

自転車の後部を、黒い手がシッカリと掴んでいたのである…

長い、長い手だ…手の後ろの方は闇に隠れて見えない。

恐怖と驚きで、僕は大きな声を出した…

そして冷静に、その長く黒い手を見た。

何故暗闇でも見えるのだろう?

黒い手が、闇よりも黒いからなのか…

ハッキリとはしていない。モヤがかかったように揺れているみたいだ…

僕は、払いのけるように、黒い手に触れた。いや触れられなかった…

黒い手がある部分は、冷気のように冷たい感触以外何もなかった…

そして黒い手は、少しずつ少しずつ薄くなって消えた…

今日、僕は会社を休んだ。考える時間がほしかった。

怖いとかではなく、なんて言うか、人生観が変わった。

人間死んでからも、その先があるのかも…

そんな考えが頭に浮かんだ。

世の中には、まだまだ分からない事がたくさんあるのだと、身を持って実感した。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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