短編2
  • 表示切替
  • 使い方

都内N区

今から20年ほど前に、当時の彼氏から聞いた話です。

一人暮らしをしていた彼は、近所に住んでいた同じく一人暮らしの学校の友人の家に泊まりに行きました。

遅くまで飲んでしゃべって日付が変わった頃。

飲み物も食べ物もなくなったので、近くのコンビニに二人で買い出しに行きました。

コンビニまでは歩いて五分とかかりません。

彼の住んでいた地区は、車がやっと一台通れるような細い路地ばかりの、静かな住宅街です。

買い物を済ませ店を出たらすぐ左手に曲がる。

来る時にも通ったそこは、人が二人並ぶといっぱいになってしまう道。

灰色の高い塀が続いていて中はコンビニの裏手にあたる住宅です。

立派な高い木が繁り、なかなかのお屋敷な様子。

夜中なので、静かに、二人無言で歩いていたら…

『!?!?!?!?!』

そこにあり得ない物を、彼は目にしてしまいました。

(え?え?え?)

慌てて隣の友人を見ます。何も言いません。

でも横顔がこわばっていました。

(今は何も言うな…!)

そんな風に目で言っているようにも見えたらしいです。

二人は無言のまま、やや早足で友人の家に戻りました。

アパートに入りドアを閉め鍵をかけた途端、

「な、見たか…?」

「見た…」

二人が見たのは、同じものでした。

自分達と同じ、20代前半位の男性。

白っぽいチノパンのような物をはいて、上半身は緑色のパーカーを着ていた。

(私の記憶が曖昧ですが、メガネを掛けていた?とも話してた気がします。)

そんな風貌の若い男性が

お屋敷の塀の上、大きな木の枝の下に、フワフワ浮いていた…

リアル過ぎて、逆に怖かったそうです。

後日、彼らが実際に見た場所を私も歩いてみました。

古いコンクリートの塀は 高さが2メートルほど。

高い木が生えていて、道に向かって見上げるほどの枝が伸びていました。

木には古めかしい札がかかっていて、都か区の天然記念物のような物に指定されていました。

「ここに、居たの?

浮かんでいたの?」

「うん。ちょうど俺の目線の少し上くらいに足があって…

青白い顔してたと思う。

目線は合わなかったけど。」

この彼氏とは5年位付き合いましたが、怖い話を聴いたのは一度きりでした。

彼自体は霊感はなかったけど、一緒にいた友人がよく見る人だったらしく。

つられて同時に目撃したのかもしれません。

このサイトでも、幽霊と言えば髪が長くワンピースを着た女性が圧倒的に多いけど…

パーカーにチノパンの男性なんて珍しいので、投稿してみました。

後々、障り等もなかったので、同じ年頃の男性が楽しそうにしていたのがうらやましくて現れたのかもしれませんね…

怖い話投稿:ホラーテラー ROSYさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ