中編3
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彼女の告白

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「実は 主人はもう何年も前に亡くなってるんだ・・・」

彼女は唐突に語り始めた。彼女と出会ったのは 通信制大学のスクーリングでお互いに社会人学生だった。

その大学はレポートや試験がとても厳しく、学生の半数以上は脱落 規定年数で卒業と同時に国家試験に合格できるのは1割しかいないといわれてた。

仕事や家事、育児等と勉強を両立させる社会人学生達にとってお互いに励まし合い協力するのは自然な流れだった。

数人の仲間の中で彼女とよく話すようになったのは、お互いに父親が末期癌だったので その悲しみや苦しみを共有できたからだった。

彼女は塾の講師で夫と二人暮らしだと聞いていた。彼女の住んでいる所は携帯がつながりにくかったので よく自宅に電話したがご主人が出たことは1度もなかった。

私は一足先に大学を卒業し無事に国家試験に合格した。彼女も1年後に卒業し その後国家試験にも合格した。

彼女の合格祝いで飲んでいた時 突然彼女は語り始めた。以下彼女の話。

私は今まで周囲の人全てに嘘をついていたの。主人が生きてるふりをしていた。どうしても どうしても主人が死んだことがうけいれられなかったから。

主人が亡くなったのは結婚してまだ2年だった。交通事故の自損事故。即死だった。私は彼の突然の死を絶対に受け入れられなかった。

だけど姑も私以上に息子の死を受け入れられなかった。姑は悲しみを怒りに変えて私に矛先を向けてきた。

「あなたのせいであの子は死んだ!あなたと結婚したからあの子は死んだ!!許さない!絶対ゆるさない!!

私の息子をかえして~~!!この人殺し~

~!!」

お葬式で姑に罵声をあびた。私は彼と一緒に事故にあったわけじゃなかったのに。その時は会社に出勤してたから。でも姑は容赦しなかった。

連日人殺しよばわりされて 結婚と同時に購入した家も保険金も全額+慰謝料までよこせ!!と攻め立てられた。

私は耐えられなかった。会社も退職し家に引きこもった。私はだんだん壊れていった。私を残して突然逝ってしまった彼が許せなくなってきた。

彼の事故現場近くのダムに身を投げようとして警察に保護されること3回。雨の夜でも何時間も事故現場にたたずんで彼が出てこないか待ち続けた。

最後には彼のお墓で一晩中過ごして 「どうして私を置いて一人で逝ってしまったの?ひどい!ひどすぎる!許せない!!」ってね。私があの世に化けてでそうな勢いだった。

そんな状態が3年程続いた。その間に実家の親と姑が壮絶な戦いをして弁護士を通して家だけは死守してくれた。親は帰って来いと言ったけど彼と過ごした家から絶対離れたくなかった。

貯金も底をつき生活のために新しい職場に就職したけど 彼の死を受け入れたわけじゃなかった。だから周囲の人に主人が生きてるふりをしていた。

2年もそんな生活をしてると少しずつこのままじゃダメだと思い始めた。何とか新しい生き方をみつけなきゃと思ってもう一度大学に入りなおしたの。

あなたの助けがなかったら一人では乗り越えられなかった。生き残れなかったかもしれない。本当に感謝してる。ありがとう。

彼女はにっこり笑った。私は衝撃のあまり言葉がすぐに出てこなかった。

「あ・・そうか、よくがんばったね。大変だっただろうけどもう大丈夫だね。ご主人のこと許せるよね?

でもさ、もしかして噂の心霊スポット思いっきりつくったんじゃない?」って聞いてみた。

「うん、まぁそうみたい。でも彼は出てこなかったから大丈夫。」

彼女はまた笑った。

今は資格を生かしてまた別の職場に就職している。この職場では未亡人だという事実を隠していないそうだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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