長編8
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知らない手紙「完」

長かったこの話も、ついに今回で最後です。

今まで読んでくれた皆様、本当にありがとうございました。

そして、期待に応えられていなかったら・・・本当にごめんなさい・・・

よかったら読んで下さい。

ラスト・・・

マンションに着くと、ポストに封筒が入っているのに気が付いた。

サイズはA3くらい。差出人はA(父親)

急いで部屋の前で封筒を破き、中身を見た。

部屋の中には入れない。なぜならここはもう解約したからだ。

そこには手紙とノート1冊。そして小説の原本らしき物が入っていた・・・

僕はまず、手紙を読んだ。

「〇〇へ・・・

おめでとう。お前は当たりだ。これでやっと終わった。

本当におめでとう。でも俺におめでとうと言う資格はないのかもしれない。

この様な事になったのは全て、俺のせいだからだ・・・

それは本当にすまないと思っている。

そしてお前にもう一度会えて嬉しかった・・・

多少意地悪なことをしたのは許してくれ。親が子供に意地悪したくなるのは仕方ないんだ・・・でも楽しかったよ。お前とまたいろいろな思い出が作れて。

そして抱きしめてやりたかった・・・

でも出来なかった。

お前が俺の事をその時に、父親だと知ってしまうと意味がないからだ。

本当は俺はお前の父さんだ。ずっと一人にしてすまない。と言いたかったよ。

お前と一緒に飲んだときに、今まで辛かったとこを聞いて胸が痛かった。

お前に引き取り人がいないのは俺のせいなんだ。

俺は高校卒業と同時に、両親の反対を押し切り、小説家を目指した。

お前の母さんと駆け落ちしてな・・・

そのせいで家族や親戚には勘当されたからな・・・

そんな奴の息子など引き取りたくなかったのだろう。

本当にすまなかった・・・

そして俺は、どうしてもこの小説を書き終わりたかったんだ。

でも俺には出来なかった。書き終わる前に死んでしまったから・・・

そして消えてしまう俺には書けない。

書いたとしても、その小説は消えてしまうからな・・・

だから〇〇、お前が続きを書いてくれ。

俺の夢を・・・叶えてくれ。

愛しているぞ〇〇」

手紙はこれで終わっている。小説?この原本か?

これはA(父親)が死ぬ間際まで書いていたものなのか・・・

タイトルは

「知らない手紙」

作者名

「イカミ シュン」

この名前は僕の名前をなぞったもの。

A(父親)は僕が生まれてから、この名前で小説を書いていた。

そして僕は・・・涙を流しながら・・・この原本を読んだ・・・

「僕の名前は〇〇。(僕ではない)去年大学を卒業し、今年から社会人になる。

そして、夢である小説家を目指し、今の会社に入社した。

やっとの思いで、この会社に就職できた。

そのため、家を決めるのが遅れてしまった。

それは仕方がないことだろう。

希望の物件は家具付。今更こんな物件あるのだろうか・・・

でも運よく僕は見つけた。

希望していた家具付の部屋。

何故か前の住人が家具を置いていったらしい。

そして驚いた事に、置いてある家具は僕好みの家具だ。

運がいい。その時僕はこの程度にしか思っていなかった・・・」

!!!!!!

僕は読むのを一旦止める。止めるしかなかった・・・

「僕と同じ状況が書かれている・・・

まさか・・・この小説の主人公は僕なのか!!」

僕はもう読むしかないと思い、一気に読んだ。

その予感は当たっていた。

僕がこのマンションを手に入れてからの状況と、この小説の内容が一緒なのだ。

4月12日に手紙を受け取る所。

手紙の送り主は僕のことを知っている所。

これから起こる事を知っておいて、僕に指示してくる所。

そして・・・始めての友人に会う所・・・

まったく一緒だった・・・

でもこの小説はここで終わっている。正確には中途半端に終わっている。

A(父親)はこの途中で死んだ。多分そうなのだろう。

「父さんはこれを書いた次の日に死んだのかな・・・そうじゃなかったら、こんな中途半端で終わってない・・・」

A(父親)は毎日のように小説を書いていた。本当に毎日。

だが有名作家にはなれなかった・・・今まで書いた小説は売れなかった。

本当に書き終えたかったのだろう・・・

小説家を目指している僕には、その気持ちは痛い程分かる。

僕は次にノートを手に取り読む。

そこに書かれていたのは、この小説のシナリオだった・・・

・ 〇〇は幼くして両親をなくし、そのせいで人と関わることが苦手になる

・ 両親は駆け落ちしており、両親の家族とは絶縁状態で、引取り人がいない〇〇は施設に入れられる

・ それからも〇〇はずっと一人ぼっちな生活を送る

・ 夢は有名小説家、そのために日々努力する

・ そして毎日日記を書いている

・ 大学を卒業し、〇〇は夢を叶えるため、出版社に就職

・ これを機会に自分(〇〇)を変えるため、今までの日記を処分する

・ この会社の面接の日に、始めての友人が出来る

・ そして4月1日に念願の家具付の部屋を手に入れる

・ 自分好みの家具があった

・ 4月12日に知らない手紙が来る

・ 自分の事を送り主は知っている

・ 自分の未来を送り主は知っていて指示を出してくる

・ その指示通りに生活すると上手くいく

・ 手紙への返事は友人がする(友人が1人目の自分とあった友人と、同一人物だと後で分からせるために)

・ 3月12日に最後の手紙と鍵が送られて来る

・ その住所に行くとテーブルの上にノートが2冊と指示(22人目の僕が書いていた内容と一緒)が書いてある手紙が置いてある

・ その指示に従うと自分は23人居たことが分かり、友人は自分の父親だったと分かる(今まで顔は知らなかったから)

・ そしてこの住所は以前友人(父親)と住んでいた住所だと知る

・ 1人目の〇〇は友人(父親)に部屋を勧められ、そこに住む

・ 1人目の自分はその友人(父親)から手紙と鍵を貰い、その住所に行く。この時もう友人(父親)は存在しない

・ そこには友人からの手紙と指示(1人目の僕に書かれていた内容)が書いてある

・ 23人ともその指示に従う

・ 友人(父親)は23歳の時に死んでいる

・ 友人(父親)は〇〇(自分の子供)が23歳になる年にまた会える。この時、父親と知られてはいけない

・ 〇〇(自分の子供)と最初に会ってから23年後にまた再会する。この時、父親と知られてはいけない

・ そして23人目の〇〇に、自分(父親)の夢を叶えてもらうため、自分(父親)が書けなかった小説を〇〇(自分の子供)に書いてもらう様手紙を書く

・ そのために〇〇(23人目)が4月1日を迎えた時に、自分(父親)が書いた小説の原本とこのシナリオを書いたノートと手紙をポストに入れる

・ そして〇〇はこの経験で人という存在の有難さ、そして今を生きている事の素晴らしさを知る

・ でも〇〇はこんな事に巻き込んだ父親を恨む

・ だが小説は書く。今まで消えていった自分(〇〇)の思いのために

「そうか・・・そうだったのか・・・だから父さん(A)はあんな行動を取っていたのか。」

ここからは僕の憶測だ。

A(父親)は僕(1人目)が23歳になる年に、僕(1人目)に会う。

とても驚いたが自分(A)が死ぬ前に書いた小説のシナリオを思い出す。

死んだのも23歳だからだ。

そして自分が考えた小説のシナリオ通りになると思ったのだろう。

だからそうなる様に行動したんだ。それならば全て説明が付く。

一番驚いたのはA(父親)だろう。

そして気が付いた。

当たりならもう一度A(父親)に会えるという事・・・

それは23人目の僕は当たりで、もう一度A(父親)に会えているという事・・・

そうなのだろう。父親と分かってからは、会えないのだ。当たりの僕でも・・・

「もう・・・父さんには会えないのか・・・」

僕は泣いた。涙がもう枯れるくらい泣いた。

だってやっとAが父親だと分かって、そして僕は当たりだった。

だからもう一度会えると思っていた。

でも違ったんだ。もう一度会えるという事はそういう事だったんだから・・・

そして22人の僕の気持ち・・・

それが分かってしまう・・・だって僕なんだから・・・

僕はマンションの前で、一人で崩れ落ちた・・・

何故こんなことが実際に起こってしまったのだろう・・・

だが実際そうなった・・・そうなってしまったんだ・・・

何故現実に起こってしまったかは誰にも分からない・・・

僕にも・・・そしてAにも・・・

「よし、今日はここまでにするか」

僕は今、自分の部屋には合わない、古いテーブルの上で小説を書いている。

そのテーブルはあのアパートにあったテーブル。

どうしても持って来たかったのだ。

今までの僕がこのテーブルで日記を書き、手紙も書いていた。

そのテーブルでこの小説の続きを書きたかったんだ・・・

あの後すぐに、今のマンションをまた借りた。

不動産の人は驚いていたが・・・だって解約したのにまた住むと言い出したのだから。

何故なら、今までの僕が残した家具がある部屋に、住みたかったのだ。

あのアパートは、僕が借りていた事になっていた。

1人目の僕の時は、A(父親)が借りている事になっていたのだろう。

そして1人目の僕が、僕の名前でまた借りたのだと思う。

だから僕は解約し、テーブルだけ持ち、今のマンションに持ってきた。

そして僕は生きている。

22人の僕が叶えられなかった夢を叶えている。

そしてA(父親)の夢も叶えようと思う。

だが一つ、シナリオと違う所がある。

それは、僕はA(父親)を恨んでいない事。

だって巻き込まれたのはA(父親)もなんだ。

それに大好きな父親にまた会えた・・・

それだけで十分だ。

僕はこの経験でたくさんの事を学んだ

生きているという事の素晴らしさ・・・

一日一日を大切にする事の大切さ・・・

人の温かさや、優しさ・・・

一人じゃないという事・・・

そして父親の愛情・・・

A(父親)はこれらの事を僕に、教えたかったんじゃないかと今は思う。

教えるまえに死んでしまったから・・・

僕は今までの自分を変えようと日々努力している。

A(父親)の夢を叶えられるように・・・

そしていつか僕の夢である有名作家になるために・・・

今日もこの小説を書いている。

タイトルはもちろん

「知らない手紙」

作者名

「イカミ シュン」

この小説がこの世に出回るのは

まだ先の事かもしれない・・・・

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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久々に一気読み出来るシリーズでした。
凄く良い作品に会えました。
ありがとうございます。

切ないねぇ~(´;ω;`)