短編2
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夏の思い出

小学2年生の夏、友人二人と近所のAちゃんの家に遊びに行った。

Aちゃんの家は養豚をしていて、集落から離れた場所にポツンとある。

通りから舗装されていない細いわき道が伸びていて、それはAちゃんの家にしか続いていない。

私たち3人は遊びながら草の生えた道を歩く。

途中、ひどく汚れた服を着た知らないおじさんとすれ違ったけれど、気にしない。

道の突き当たりはAちゃんの家の庭だ。

「A~ちゃ~ん」

家に向かって3人で声を揃えて呼んでみたけど、返事は無かった。

「いないのかな?」

私たちは顔を見合わせた。

そして、玄関まで行ってみようという事になり、広い庭を歩き始める。

庭には白っぽい砂利がまいてあって、3人分の足音が遠慮無く響く。

ザリ…ザリ…。

ふと、一人分の足音が止まった。

「あれ何?」

Bが縁側を指さす。

見ると、縁側の床は黒い絵の具をバケツいっぱいひっくり返したみたいに激しく汚れ、その絵の具のような物が開け放たれた縁側から滴り落ち、白い砂利に黒い水溜まりを作っていた。

そして、縁側の汚れた床には赤いハンテンみたいな物や何かが転がっている。

私の家では養鶏をしていた。

時々、死んだばかりの鶏の首をはねて木の枝に逆さに吊す。

そうすると、その下には小さな黒い水溜まりが出来た。

そう、ちょうど縁側から滴り落ちている黒い水溜まりのようなのが…。

私の頭の中で、不意に木に吊された鶏と、縁側に転がっているハンテンのような物が重なって見えた。

その瞬間、私は来た道を走って逃げた。

走って走って、自宅まで逃げ帰った。

あれが何なのか分からない。

でも、あの黒い水溜まりは血だ。

分からないけど、間違い無い。

その日の夜、Aちゃんの曾おばあさんが亡くなったと電話で連絡が来た。

聞いた話しによると、縁側で陽向ぼっこをしている時に誰かにナタでメッタ打ちにされたらしい。

一緒に居た友人だが、Bは訳が分からず私の後を追いかけて来たが、走り疲れて途中で家に帰ったらしい。

もう一人、Cは…。

縁側の惨状が何なのか全く見当も付かず、近づいてよく見てしまったのだろう。

衣服を血でベットリ汚して呆然としている所を帰宅したAちゃんのお父さんに発見されたらしい。

一週間ばかり学校を休んだが、その後全く普通だった。

怖い話投稿:ホラーテラー インカローズさん

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