短編1
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見えない

夜、車を走らせていると、妻が声をかけてきた。

「ねえねえ、今交差点の所にいた老人見えた?頭から血を流してた老人」

俺にははっきり言って霊感と言う物が全くない。

「いや…見えなかったが…」

そう答えた。

すると妻が今度はビルを指さして言った。

「じゃあさ、あのビルの屋上の手すりの所に立ってる女の人は?」

俺はビルの屋上を一瞬見て見たが、妻の言う女は見えなかった。

「いや…見えないが…」

妻は不満そうに黙りこんでしまった…

墓地の横を通り過ぎようとした時、妻が大きな声で言った。

「ねえ、あのふわふわ浮いてるヒトダマくらいは、さすがに見えるでしょ?」

俺は首を横に振りながら答えた。

「いや…見えない…」

妻が呆れた声で呟いた。

「あなたって本当に何も見えないのね…」

そうなんだ…俺は何も見えないんだ…

一年前に死んだ妻の姿さえ見えない俺は、妻の声がする方に向かって「ごめんよ」と呟いた…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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