中編4
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平家の隠れ里

長文で申し訳ない。学生時代の話です。

所属していたサークルの活動の中に、8月にグループごとに選んだ任意の場所を5日間ほどひたすら歩くという行事がありました。(遠足という認識でかまいません)

私のグループは熊本県の五家荘という地域に決まりました。

そこはかつて壇ノ浦の戦いで敗れた平家が落ち延びたというなかなかの秘境です。

一つのグループは男女合わせて約20人でしたが、荷物は重いし暑いし坂はきついのでなかなか予定通り進まなかったのを覚えています。

泊まるのは事前予約しておいた公民館や地元の方のお宅にお邪魔しました。

問題の分校に到着したのは3日目の夕方です。

かなり山奥にあるその分校の校庭で町内会の管理係(Aさん)が出迎えてくれて、家庭科室や大広間などの説明をしてくれました。

皆が荷物を置いて食事の支度などを始めていると、Aさんとグループリーダーが神妙な顔付きで話をしていました。

仕事をサボりたかった私はその話の中に入りました。

Aさんが言うには『2階は出るから夜になったら行かないように』だと。

いい歳したおじさんが学生達を怖がらせようとしてそんなこと言ってるだけだと思いました。

実際リーダーは怖がりだからその話だけでビビってました。

時期的にもぴったりだし、日頃から「また見てしまった~」などとほざく友人Tを誘って肝試しをしようと思いました。

私は霊感ゼロですが、「見える 」とわざわざ言う奴は周りの気を引きたいだけだと思ってました。Tはお調子者だったので尚更です。

自由時間になってから私とTとその他4人で2階に上がりました。

さすが夜の分校だけあって雰囲気はかなりのものでした。

階段は校舎の中央にしかなくそこから左右に教室が3部屋ずつありました。

ちょうどいいので一人が一つの教室を調べてくることにしました。ジャンケンして勝った者から選んだ教室に入ってから戻るまで、残りの5人は階段の前で待ちます。

教室は奥から①②③階段④⑤⑥とします。

2階は電気がまったく点いていないため暗闇でしたが、ペンライトをかざしてみると①②③は普通の教室で④⑤⑥は音楽室などの表示に思えました。

ジャンケンで1番になった私は②の教室を選びました。

本当は少し怖かったので③にしたかったんですが‥

ライトは待機組が一つと調査する人が一つ持つことにしました。

木造の軋む廊下を歩いて②の教室に着き、引き戸を開けました。

この時は背後が廊下、その外は校庭です。前方の教室の奥側は山になってます。

普通とは逆の造りじゃないか?などと思いながらライトで中を照らしました。

中はいたって普通の教室で特に変なところもありません。

階段の方からは連れのひそひそ話が聞こえてきます。

怖がっていないアピールのためにロッカーを開けたり机を少し動かしたりして聞こえるように音を出しました。

黒板を背にして教室を見渡しながら「やっぱりAさんは面白がってあんなこと言ったんだな」と自分に言い聞かせてました。

まったく何もないのもつまらないと感じつつ、何もないことにやはり安心してました。

が、階段に戻ろうとしたその瞬間、突然ライトの灯が消えて闇に包まれました。

スイッチはONのままです。

またまた~なんて呟きながらON・OFFをカチカチしてると山側の窓で何かが動いたのを視界の端で捉えた。

暗闇だけどなぜかわかった。

いやいや気のせいだろ。映画じゃあるまいし。

しかし心拍数は上昇し、霊感ゼロの私が気配を感じてしまうのはさすがにマズいかなと思い、小走りで階段に戻りました。

暗闇からライトを点けずに私が走ってくるから連れもビビって逃げ出しました。

「俺だよ!ライトが壊れたんだよ!」と言ったら「何だ、脅かすなよ」と4人は笑ってましたがTは笑ってなかったんです。

私は本当にTが『見える』とはさらさら思ってなかったので、私の演出に不機嫌になったのかなという感じで軽く流してました。

待機組からすれば演出だと思うのは無理もないことでした。

階段に戻ったらライトがちゃんと点いたからです。

そんな感じで私の順番が終わり、2人目は③の教室、3人目は④の 音楽室に行き無事に戻りました。

4人目はTです。もう①⑤⑥しか残ってません。

もちろんAさんの話も私がさっき②で味わった(勘違いと思うようにした)ことも言ってません。

Tはしばらく考えた末に①に決めました。

その理由は「⑤⑥は嫌な気がする。俺はたまに見たりするけど除霊とかはできない」

内心「ハイハイ」と思いつつ①に向かうTを見送った。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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