中編3
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望むモノ

ある女性と出会った。

綺麗で、普通の男性ならまず魅了されてしまうような女性だった。

一目で恋に落ちた俺は必死で口説いた。

最初は困ったような顔をしていた彼女も俺の熱意に負けたのか、ある一つのことを条件に付き合うこととなった。

「何があっても私のことを信じて欲しい」

付き合えたことに舞い上がってた俺は、疑いもせず信じることを約束した。彼女の事など何一つ知らないのに…

その日から彼女と一緒に住み始めた。

正確に言うと彼女が俺の家に住み着いた。

何一つ荷物も持たず、今までどんな生活をしていたかもわからず、それでも彼女といることが幸せに感じた俺は一切問いたださなかった。

問いただしてどこかに行ってしまうのが怖かったのかもしれない。

ただ一つ不満と言えば、夜の行為の間は相手の顔も見えない程暗闇にしなければ嫌がったことだろうか。

それからの俺は本当に幸運続きだった。

彼女を幸せにしたい一心で懸命にも働いたが、それ以上に仕事がうまくいく。

忙しい日々ではあったが、家に帰れば彼女がいる。

俺の望むことは何でもしてくれる。…まぁ、夜の行為の方は相変わらずだったが。

それからも懸命に働き続け、気付けば出会ってからずいぶん経っていた。

途中で独立し、自分で興した会社も安定した。

金もある。目の前には相変わらず美しい彼女。

「結婚したい。」

彼女に申し出た。しかし彼女は困った顔をするだけ。

今更ながら彼女のことが何も解らないことに苛ついた。

そんな自分の感情を隠しもせず、俺は外に飛び出した。

その日からキャバクラやクラブなど遊び三昧。

彼女の気持ちを掴めないことに自棄になり、散々金で済む女と遊び歩いた。

そんな日々にも疲れ始めた頃、やはり彼女の事を思い出す。

ちゃんと彼女と話し合ってみよう。

罪悪感にも駆られながら久々に家に帰ってみると、彼女は変わらず出迎えてくれた。

怒りも何も無い。本当に何も無かったかの様に優しい笑顔。

思えば今まで喧嘩もしたことが無かった。

また怒りが沸きだした。

俺が何をしても興味無いってことか!?

「お前のことが何一つわからない。お前は一体何なんだ!?本当に俺の事を愛してくれているなら全部話してくれ!!」

彼女は困った顔をしながらも口を開いた。

「私は…あなたが…望むモノ」

彼女の顔は相変わらず美しい。出会ってから相当の年月が経っているのに…

俺はゾッとし、彼女を指差し叫んだ。

「お前は…悪魔だ!!」

悲しそうな彼女の顔は、みるみる俺の想像通りの悪魔の姿に変わっていく。

『何があっても信用してって言ったのに、貴方も悪魔と言うのね。私は貴方の望むモノ…』

俺はあまりの恐ろしさに、「消えてくれ!」と必死に祈った。

それから彼女を見てはいない。

本当に消えてしまったのか、それとも誰かの元にいるのか…

あれから俺は、会社も金も健康も、住む家さえ全てを失った。

もし俺があの時…彼女を信じ切れていれば…

幸せな人生を歩めていたのか、それとも更なる代償が待っていたのかは分からずじまいだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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