短編2
  • 表示切替
  • 使い方

『何かが聞こえる』

何かが聞こえる。

風の音のようだが、何かが違う。

もし、風であるならば、窓の外にかけてある風鈴が音を奏でるはずだ。

だが、風鈴の音色は一切聞こえない。

しかし、さきほどからずっと窓の外から何かが聞こえる。

見ていたテレビを消す。外から聞こえてくる音に集中するためだ。

だが、テレビを消した瞬間、その音も聞こえなくなった。

数秒間、自分の耳が音を拾わなくなったと思うくらいの無音が部屋を包む。

「チリンチリン」

と、外の風鈴の音がその静寂を破った。

テレビの音だったのか、と思いテレビを再びつけようとした瞬間

「カタカタカタ」

と、再びその音が聞こえた。

今度ははっきりと聞こえた。

「風の音ではない」そう確信した。

なぜなら先ほど風鈴が鳴った時に、その音は聞こえなかったからだ。

もし風の音ならば先ほど風鈴が鳴った時に同じ音が聞こえたはずだ。

泥棒か?それとも猫か何かが迷い込み窓を引っ掻いているのか?それとも―――

ソファから立ち上がり、ゆっくり、ゆっくりと、窓のほうへ近づく。

手が汗でじっとりと湿る。呼吸も少し荒くなる。

だってそうだろう?一人暮らしを始めてまだ一週間。しかも熊本県の田舎。住んでいる二階建てのアパートは古びていて、8室あるうち3室しか人が住んでいない。そして、最悪なことに、僕の部屋の両隣は空いているのだ。もし、窓の外にナイフをもった不審者でもいたら?もし、そこに赤いワンピースの四つんばいの女でもいたら?

窓の前に立つ。先ほどの音は相変わらず鳴り響いている。しかも、明らかに先ほどより大きくなっている。勇気を振り絞り、僕は赤色のカーテンを掴んだ。

続く

怖い話投稿:ホラーテラー その日の前にさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ