中学の時の話です。
中学の頃は学区も限られているので、仲の良い子の家に行き来がありました。4、5人位の間でよく行き来していたのですが、その中の一人(仮にAとします)は頑として皆を自宅に招こうとしませんでした。
たまに私たちは「Aの家に行きたいなあ」などと言いましたが、Aは「ごめんね、どうしてもだめなんだ」とすまなそうに言うばかりでした。
Aは一人っ子特有の恥ずかしがりやで慎ましい性格の子でした。日頃から皆との仲も良く、私たちもそんなことは特に不満ではなかったので、そんな感じで日は過ぎていきました。
中学1年の夏休み前日でした。Aが秋から転校することが担任から告げられ、私たちはびっくりしました。当のAは私たちに言いそびれていたことを謝り、「今日はうちに遊びにこない?」と初めて言い出したのです。私たちは喜んで誘いを受けました。
学校が終わり、他の数人と待ち合わせてAの家へ向かいました。場所は学区内ですし、大体わかっていました。それはごく普通の住宅街の一軒家でした。
インターホンを鳴らすとすぐに玄関が開けられました。
こんにちはー…と言ってから私たちはちょっとの間絶句しました。
入ってすぐの壁一面に、赤で何か書きなぐってありました。一つ二つではなく、いくつもいくつも。そして手形のような跡や傷の跡……
書いてあったのは「消えろ」「もうすぐだ」「わかるものか」「逃げられはしない」…のようなフレーズだったと思います(正直よく覚えていませんが、あとから友達と話した限り、そんな感じでした)。手形は大小様々でした。
絶句している私たちにAは何事もないかのように「どうぞ入って」と言いました。
その時、家にはAしかいないようでした。
通されたリビングにも同じように壁に書きなぐりと手形・傷跡がありました。
一番驚いたのはリビングの隅の床に穴が掘ってあったことです。いえ、ビニールシートがかけられており、穴とはっきりわかったわけではないのですが、部屋の隅には土がかなりの量盛られており、床も土で汚れた状態だったので、(穴を掘っている?)という印象を受けただけなのですが。
実際はなんだか分かりません。
一応リビングのソファーを勧められて座ったのですが、全員言葉がありませんでした。
友達の一人がやっと「この家どうしたん?」と尋ねました。
Aは「ああ…汚れててごめんね…」とだけ言って笑っていました。
(汚れているとかいうのと違うやん!)と今なら突っ込めますが、当時はとてもそんなことは言えず、またその家自体に何も言えない空気が充満しており、私たちは顔を見合わせるしかありませんでした。
部屋の雰囲気は異様でしたが、その場で私たちが雑談し、お菓子まで食べたのも今思うとさらに異様でした……
しかしさすがに落ち着かず、 1時間もしないうちに誰からともなく帰ることにしました。
帰り際にAはぽつっと私たちに言いました。
「ここもやっぱり結界が張り切れない。お父さんとか頑張ったけど私たちは暮らせない。今両親が調査中だけど次は良いところに引っ越せそうだから嬉しい…」というようなことを言いました。
意味が分かりませんでしたし、この通りではなかったかもしれませんが、「結界が張り切れない」「お父さんは頑張った」という言葉は強烈に覚えています。
そのまま夏休みに突入し、2学期にはAは予定通り転校しました。
私たちは学校でAのことを話すことはしませんでした。なのでAは普通に皆の記憶から消えていきました。
しばらくあと、好奇心から私は一人でAの家を見にいったのですが、完全に家は建て替えられ、ごく普通に全く違う方が住まわれていました。
今思うともっと聞いておけばよかったかな…でも聞かなくてよかったかもしれません。
さっぱり分からない内容と、誤字・脱字・乱文すいません。このサイトを見ていてふっと思い出してしまいました。
このこと以外は、Aには良い思い出ばかりです。Aが今でも元気でいてくれたらいいなと思います。
怖い話投稿:ホラーテラー トゥエさん
作者怖話