短編2
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義母の味

義母が亡くなって半年がたちます。

優しく、おおらかで、家事も料理も全てこなす義母が私は大好きでした。

義母が亡くなってから、寝たきりの義父の世話は、私の役目になりました。

口うるさい義父は、私に何でもかんでも文句を言います。

掃除が雑だとか料理が不味いとか…

この人の世話をずっと続けてきた義母を私は尊敬しました。

特に義父は、味噌汁の味に毎朝文句を付けるのです。

「こんな不味い味噌汁飲めねえ。本当に料理が下手だな。ああ…妻の味噌汁が飲みてえなあ…」

介護がこんなに大変だとは、私は思いもよりませんでした。

後何年この人の世話をしなければならないのだろうか…

私は少しずつノイローゼ気味になって行きました。

ある朝、私がいつものように朝食を作っていると、最近体調が良くなってきた義父が台所まで歩いて来ました。そして私の作っていた味噌汁を味見したのです。

そして次の瞬間、鍋を持ちあげ、流しに味噌汁を全て捨てたのです。

「こんな味じゃダメだ。作り直せ。」

義父はそう言って部屋に帰って行きました。私は悲しいやら腹立たしいやらでどうしようもありませんでした…

そして恐ろしい事をしてしまったのです…

それは、作り直した味噌汁の中に、台所にあった殺虫剤を混ぜてしまうというとんでもない行為でした…

ノイローゼと疲れで頭がおかしくなっていたのでしょう…

何気ない顔をして、朝食を義父の部屋へと運び、台所に戻ると、自分がしてしまった行為にガタガタと震えてしまいました…

すると、部屋から義父が大きな声で私を呼ぶ声がしまった…

「おーい、ちょっとこっちへこい!」

私はフラフラと義父の部屋へ行きました…

義父は私を睨み付け言いました。

「あんた…この味だよ。俺はこの味を待ってたんだ。妻が作ってくれた味噌汁の味にそっくりだ。やれば出来るじゃないか。」

優しく、おおらかな義母。

私は今でもあなたを尊敬する気持ちは変わりません。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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