短編2
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うちの娘

うちの長女、3才を過ぎたあたりから玄関や天井に向かって見えぬ何かに怒鳴りつけるようになった。

『来ないで!』とか

『怒るよ!』とか…。

長女が6才の時私が二人目を授かり、それを機に現在の家に引っ越したのだが引っ越した初日に窓ガラスに向かって、

『だから来ないでって言ってるじゃん!ここは〇〇(娘)のおうちなんだよ!!』

…誰が居るの?と聞くと『知らないおんちゃん』と答えるだけ。

心なしか、私が妊娠してから娘が何かにキレる回数が多くなった気がした。

臨月も近いある日、私が財布の中のレシートだのポイポイ捨てていると長女が寄ってきて、

『ママ知ってる人?』

と、いつの間にか私がお守り代わりに財布に入れていた亡き父の免許証を持っていた。父は長女がお腹に居る時亡くなったので、そういえばこっちのジイジを知らないんだもんな~。と思い、

『この人はママのパパだよ~だから〇〇のジイジだよ。本当はジイジはもう一人居るんだよ。』って言ったら、いきなり娘はウルウルしだした。

そして泣き泣き、

『ジイジなんてね知らなかったの。だから来ないでなんて言ってごめんなさい』と声を震わせて…。しばらく私の頭の中は?だらけだったが、ようやく娘が怒鳴っていたものが亡き父だったと分かると涙が止まりませんでした。

昔から父と私は折り合いが悪く、葬儀でこそ悲しくなって号泣しましたがそれまでは‘口煩くて糞真面目で嫌な奴’としか思っていませんでした。

私が上京する時も、結婚する時も最後まで反対したのは父でした。

無事に次女が産まれて家族四人で久しぶりに片道八時間かけて墓参りに行き、『心配してくれてありがとう、でももう大丈夫だからゆっくり休んでね』と手を合わせ、生前父が大好きだったマイルドセブンを供えて来ました。

それからぷっつりと長女が怒鳴る事はなくなりました。お父さん、我が儘一人娘と可愛い孫を最後まで心配してくれてありがとう。安心して今度は空から見守って下さい。

長々と失礼しました

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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