短編2
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或る家

男は、一人暮らしの女を好んで狙う空き巣だった。

何日にも及ぶ綿密な下調べの末、今日のターゲットは黒髪が美しい、ある女の部屋に決めた。

深夜2時、調べが正しければ家にいない時間。 彼は窓から音もなく部屋へ入った。

部屋を見渡す。

おかしい。

ベッド、机、パソコン、冷蔵庫。

何一つ置いていない。

ただ、部屋の隅に相当古いブラウン管のテレビがポツンと置いてあるだけだ。

こんな部屋で若い女が生活できるはずない。

どういうことだ? 引越? もしかしたら同業者に先をこされたか?

考えを巡らせながら、しばらく部屋のなかを歩く。

その時、ふと備え付けのクローゼットが目に入った。

もしかしたら、毛皮のコートなどの金目のものが見つかるかもと思い、戸を開けてみる。

なんだこれは??

クローゼットの中は、何着もの真っ白なワンピースがかけられていた。

これだけか?

確かにこの間観察した時も同じ白のワンピースだったが…。

男はだんだん怖くなってきた。

まともな若い女なら生活できない部屋、そしてこの純白のワンピース。

絶対に変だ。 早く出ないと…。

男は急いで窓に走り、縁に足をかけた。

その時。

…ぶんっ

テレビがついた音。

振り返ると、砂嵐…そして白黒で何かが映し出される。

これはやばいパターンだ。 絶対このまま見ててはいけない。 早く外へ…。

しかし意識とは裏腹に彼の目はブラウン管から離せなくなっていた。

画面の中、中央には古井戸。

右上には現在の時刻が、3:59分と刻まれている。

???

もうこんな時間か?? そんなに長い間ここに!? ここの住人は3:30には家に帰っているはずだ!

その時、ブラウン管に変化があった。

井戸の縁に手のようなものが。 頭…長い、黒い髪の毛が見えてきた。 顔は髪の毛で隠れて見えない。 見ている間に全身が井戸から出て来た。真っ白なワンピース。白黒の画面でも、強烈な白さを見た。 そして、ゆっくり、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

彼はじきに自分の命が終わることを悟り、気絶した。

ああ、今日は30分遅く家に帰って来たんだな…。

怖い話投稿:ホラーテラー わんこさん  

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