中編4
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トニーの告白[前]

一部読みやすいようにあえて和訳してます。

内容には多少の補足や付けたしもあるけど理解してください。

俺にはトニーという名の在日米軍海兵隊の友人がいた。

俺とトニーとの出会いは2005年の秋、共通の友人を介して知り合った。

俺の尊敬する高校時代の先輩、恵梨さんがボランティア活動中に

意気投合した相手がトニーの奥さんだった。

トニーの奥さんの名前はエリー。

恵梨さんとエリーはよく似た名前だった事もありすぐに意気投合したらしい。

俺とトニーは恵梨さんの誕生日会で知り合った。

米軍兵のイメージは野蛮で荒いイメージがあるかもしれないが、

実は柔らかい性格の人も多い。

特にトニーのような妻子持ちのエリート軍人は、

日本人を下に見る事もなく礼儀正しい人が多いんだ。

ちなみにトニーの年齢はその時33歳で階級は大尉だった。

俺は英語はほとんど喋れないが、トニーの父親が貿易商で、

10代半ばの若いころ九州のある地方に2年間暮らしていたらしい。

トニーはその時に日本人の女の子と付き合っていたらしく、

トニーの日本語力はなかなかのものだった。

ちなみに奥さんのエリーも父親がトニーと同じ軍人で20年前に

横須賀に赴任していたらしく、10代半ばの頃に約3年間日本に住んでいた。

その時に覚えた日本語でエリーも日本語は流暢だった。

夫婦揃って親日派&知日派だった。

そして年の離れた俺とトニーは意外にも仲良くなり、

金曜や土曜の夜はほぼ隔週でカラオケに行ったり飲みに行ったり

ドライブに行ったりした。トニーの唄うビートルズは最高だった。

トニーの連れてきた若い隊員や俺の連れも合わせて、

気がつけば10人くらいでワイワイと遊びに行く関係になった。

トニーの部下でケビンという黒人の海兵隊もけっこう日本語を話せるらしく、

すぐに仲良くなれたんだ。ケビンが言うには、

トニーは年下の隊員からとても人気があり、人望も厚い兄貴分のような

存在だと言っていた。

トニーは俺たちと交流を深めるにつれ日本語がますます巧くなっていった。

後から聞いた話では、俺たちに迷惑をかけたくないと言って、

毎晩夫婦で日本語の勉強をしていたらしい。

トニーは見た目からして軍人よりもエリート企業家のような

風貌だったから賢いとは思っていたけど、

まさか俺たちには隠れて一生懸命日本語を勉強していた事に

素直に驚いたし嬉しかった。

トニーはその後もどんどん日本語を上達させていった。

トニーが軍の仕事で土曜日や日曜日に休めない時は、

俺たちが奥さんのエリーや娘のケイトを観光スポットやショッピングに

連れて行ったりもした。まさに家族ぐるみの付き合いだった。

そういう付き合いが2年続いた2007年の暮れ。娘のケイトの5才の誕生日会の時に、

トニーが来年春にアメリカに帰ると教えてくれた。配置転換らしい。

トニーはちょっと涙を流している様子だった。

「アリガトウ。シン(俺の名前)タチノオカゲデサイコウノマイニチダッタヨ」

そう言われて泣きそうになった。いつかはこういう日が来ると

思っていたけどいざ訪れるとショックだった。

それからトニーとは毎週金曜は必ず遊びに行った。

そして、お別れ会の日がきた。俺たちや恵梨さんでカラオケBOXのVIPルームを

貸し切って、トニーに関わりのあった日本人を中心に20人くらい集めて開いたんだ。みんなで唄ったり飲んだりして騒いだ。

トニーはいつもは酒はあまり飲まないのに、その日はたくさん飲んでいた。

たぶん周りがトニーに集まってお酌するから断れずにグイグイ飲んだんだろう。

トニーは俺に「シン、ウタエ~ヨォォ!イチバンパワーアルノ

ウタエ~ヨォォ!」と言っていた。

俺はトニーが好きな「スキヤキ」を唄った。

トニーはとても楽しそうだった。

貸し切りの2時間が終わる頃には、娘のケイトは部屋の隅の

ソファーで寝ていた。とてもうるさくしていたのにスヤスヤと眠っていた。

最後にエリーと抱き合って握手した。

エリーやケイトや恵梨さんやあとの何人かは帰り、

トニーとケビンと俺とあと二人で、よく通っていたショットバーで二次会をした。

顔見知りのバーの店長がトニーへの最後の餞別という事で

いろいろなサービスをしてくれた。

トニーはかなり飲んでいるうえに、更に度のキツイ酒を飲み、

完全に酩酊状態になっていた。

するとトニーが急に

「ワタシハ…ワタシハ、チョウシヨクツカワレテルダケダヨ~」

「ワタシヲコンナコト…コンナコトニシヤガッテ…」と言いはじめた。

軍に対する愚痴だ。トニーはいつも柔らかい笑顔でいて、

誰かをけなしたり弱音を吐いたりした事を見た事がなかったので

その姿はとても意外だった。

更にトニーは続けた。

「俺は本当なら日本なんかに来るはずじゃなかった…」

俺はその言葉を聞いて少なからず動揺した。

トニーの口から「日本なんか…」とは聞きたくなかった。

ケビンも困惑した表情をしていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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