中編3
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偶然

今は11月ですが季節外れの夏の出来事をお話します。

私の地元は夏になると海水浴客でかなり賑わいます。

地元の人間は海水浴ではなく別の場所、いわゆる穴場を知っているので人の少ない穴場で遊ぶ事が多いようです。

私も子供の頃から良く行っていた場所でした。

岩がゴツゴツしていて素足では厳しいですが比較的海水も綺麗で深さもほとんどなく魚や貝が良く採れる場所で、バーベキューなんかも良くやっていました。

大学生1年の夏、地元を離れた友人が帰郷すると言うので、当時仲の良かったメンバー7人(全員男性)で会う事になった。

帰郷した友人の通う大学は海無し県の為、海が恋しいと言い、次の日はお昼前から穴場へ行きバーベキューをしようという事になった。

当日は晴天。童心に返った私達はそれぞれに海を満喫し、海から上がると持ち寄った食材とビールで腹を満たして、近況報告や世間話をして騒いでいた。

昼になると肌がジリジリと焼けるのを感じる程、陽射しが強くなってきた。

全員、暑さに耐え切れなくなりまた海に入っていた。

すると、友人の一人が食後の運動って事で泳ぎで勝負しようと言い出した。

海育ちの私達は全員泳ぎには自信があり酒が入ってハイテンションになっていたので全員で競争する事になった。

ゴールは50メートル程離れた岩場だった。

そして一斉にスタート。

私も遊びとは分かっていても勝負事には熱くなってしまう性でゴールを目指して本気で泳いだ。

その甲斐あってかゴールの岩場に最初に到着したのは私でした。

みると脱落者が二人いました。足がつってしまった奴とそれに気付いて救助した奴がスタート地点に戻って手を挙げていました。

残る四人の競争を高見の見物といこうかと思った瞬間…

背中に強い衝撃を受け、一瞬意識が飛びました。気が付くと水中に捩り込まれる感覚に襲われました。

突然出現した大波に海にいた5人は飲まれてしまったのです。

澄んでいる海水も波の力で巻き上げられた砂で真っ暗でした。どちらが海面でどちらが海底かも解りませんでしたが必死にもがき、やっとの思いで海面に顔を出す事が出来ました。

先程自分が立っていた岩場も見えません。

私は軽くパニック状態でしたが私の近くでもう一人が顔を出したのを見てそのまま岸に泳いで戻りました。

『大丈夫かー。』

岸にいた二人が迎えに来てくれました。

私は後を振り返ると友人三人が一生懸命何かを引っ張っていました。

泳いでいたのは四人。海面に頭を出しているのが三人。

岸にいた私達は先程の大波で一人が負傷したのだと思い、急いでまた海に入った。

すると『こっちはいいから救急車頼むー。』

と三人が言う。これはマズイ事になったと思い私はすぐに救急車を呼んだ。

岸にたどり着く直前に全員が負傷したと思われる友人を離し、ダッシュで私の所へ向かってきた。

全員顔面蒼白でした。

『俺達が助けたの○○じゃなくて仏さんだった。今顔見たら全然知らないオッサンだった。』

では○○は一体何処へ?

私達は海に入りたくなかったがいなくなった友人を探しに再び海に入るが見つける事が出来ませんでした。

救急車が到着し警察に連絡をし、静かだった穴場はいつしか野次馬でいっぱいになっていた。

波に巻き込まれた私を含む5人は岩で足を切ったりしていた為、救急車で近くの病院に搬送された。

岸に残っていた二人は警察に事情を説明し、いなくなった友人の捜索が始まった。

そして○○だと思って助けた仏さんも救急車で搬送されたそうだ。

その日の夕方のニュースには●●海岸にて水難事故、死者2名と出ていた。

内一名は偶然、見つかった遺体だったのですが。

ちなみに亡くなってしまった友人は岩場の間に挟まっていて出られなくなり溺死したそうです。

人一人がちょうどはまる位の隙間が海底にあったそうです。

救助の方からは、もしかしたら、大波により先に挟まっていた仏さんが抜け出し、空いた所に偶然、友人が挟まってしまったのではと言われました。

それは偶然だったのでしょうか…。

最悪の夏の思い出です。

あれ以来、私だけでなく生き残った友人全員が海恐怖症になりました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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