短編2
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深夜、自殺の名所にて

その声で完全にパニック状態に。反射的にアクセルを踏み込む。

距離にして橋まで300M位。メーターは40から一気に100kmまでに跳ね上がる。

「ヤバい!身をのりだしたぞ!早くしろ」

俺は無言でアクセルを踏む。最悪な事に雨が一段と強さを増してきた。

見つけてから橋まで2分もかからなかった。橋の入り口付近に小さな駐車場があり、適当に車を停めて、エンジンをかけたまま車から飛び出す兄と俺。

走りながら橋の方に向かうと、ちょうど橋の中間地点で今まさに女が手すりに足をかけようとしていた。

間一髪だった。女を強引に引っ張り、勢いで倒れ込む3人。女はそれでも自殺したかったのか、立ち上がりまた手すりに足をかけようとする。俺達はまた引っ張りだし倒れ込んだ。

女は泣きながら、「お願いだから死なせて!お願いだから!」と言いながら、また手すりに足をかけようとしたもんだから兄はバックを取り、女にバックドロップをかけた。女はその衝撃で地面に倒れこんで泣いていた。

「死なせて…死なせて…」

雨に打たれたその女はあまりにぶざまで可哀想で…痛々しかった。

兄が足を持てと俺に言い、兄は両腕を持つと2人で小走りに女を車まで運んだ。

まさに修羅場だった。冷たい雨の中、自殺の名所で人を救った。

車に着くと俺が運転席、兄と女が後部席へ。女は泣きながら嗚咽が止まらない。俺は寒さで歯がガチガチと身震いしていた。兄も同じ状態だったと思う。暖房をガンガンにかけて寒さをしのいだ。そんな時、着いてからは気付かなかったが、目の前に自販機を見つけた。俺はダッシュでココアのホットを3本買った。

車に戻り兄に2本渡すと俺は速攻フタを開けた。

あの味は今でも忘れない。本当天国だった。

車では女が泣きやんでいた。兄がそっとココアを差し出す。女は本心状態でそれに気付いてない。兄が、

「冷めちゃうよ」

と、声をかけるとはっ、と我にかえり

「すみません」

と、素直に受け取ってくれた。

それからは受け答えが出来る状態になり、生い立ち、自殺しなきゃいけない理由、そして何故ここに来たか…など色んな事を話した、というか俺と兄はほぼ一方的に聞くだけだった。(一言一句書くと長々となってしまう為省略する)

続く

怖い話投稿:ホラーテラー 久々の匿名で★さん  

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