短編2
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深夜、自殺の名所にて4

俺は震えていた。タバコを消して後ろを振り返ると女は目を見開き、声を出しちゃマズイと思ったのだろう、口を押さえてる。そして俺と同じくガタガタ震えていた。

兄はというと、微動だにせずじっと見ていた。

男は橋の入り口まできた

男を見ていると、一瞬頭の中をよぎった。

たった数時間で二人も自殺の現場に遭遇するなんて…少し兄を恨んだ。そして自殺を止めないといけないと思い男の方へ行こうとノブに手をかけ、ドアを開けた。室内灯がつくと同時に兄が力強く怒鳴った。

「馬鹿!行くな!」

「はっ?」である。さっきは飛ばせというし、今は行くなと。分けがわからず橋の方に目をやると、男は手すりに足をかけた。

俺「おい、あの人死ぬぞ?いいのかよ?なんで止めないんだよ?!」

兄「もうあの人はこの世の人じゃないよ。多分あの橋から過去に自殺した人だ。(女に)よーく見とくんだ。目をそらすなよ。」

男は何の躊躇をみせる素振りも見せず、ただ淡々と、それはまるで流れ作業をしてるかのように、あっさりと……

飛んだ。

俺は自殺する光景を目の当たりにして、言葉にならずにいた。

ゆっくり後ろを振り返ると女は両手で顔を押さえて下を向いていた。もちろん一部始終見ていたのだろう。

兄はというと…

泣いていた。瞬きせずに。

兄は昔から霊感がかなり強く、俺は時々見えるくらいだ。

兄は女の方を見て言った。今でもその言葉は胸に焼き付いている

「今の見たよな。自殺なんて決して楽な事ではないんだ。様々な理由で自殺を選ぶかもしれないが、結局は未練を残すんだよ。あの男は未練を残した挙句成仏できてない。本当はもっと生きたかったはずだ。だから死んでも自殺を繰り返すんだ。世間は自殺はいけないとか言うけれどあくまでも表面上の説得であって抑止力はないと思う。個人的な意見だけど。あったとしてもその理由で本人が受け入れるかだ。

『何がいけないの?楽になりたいのに…』なんて思ってしまえばそれまでだよ。

けれど俺は少し皆と意見が違うんだよね。死んだ『後』が問題だし、大事なんだよ。ああなりたいのか?結果としてだけど死に急ぐなんて大間違い、ふざけろだ!」

女はボロボロに泣いてた。何故だか俺も少し感情的になっていた。

少し興奮していた兄は女に向かって言った、

「帰ろう」

女は頷くと、車を街へ走らせた

明日後日談をのせます

怖い話投稿:ホラーテラー 久々の匿名で★さん  

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