中編3
  • 表示切替
  • 使い方

覚醒

幼なじみのKは、霊感があった。

幼稚園は仲が良かったが小学、中学はクラスが違ったせいか絡むことがなく時間は流れ高校生になった。

となりの町の同じ公立高校に通うことになり改めて仲良くなり通学も一緒に。

ある日、Kが霊感があることを打ち明けた。

最初は信じていなかったけど、後に信じずにはいられなくる事件が起こる…

ある寒い冬の学校からの帰り道での出来事。

夕方の家路までの一本道を、Kと一緒に帰宅途中に

ふとKが足を止めた。

道路の右側を歩いていた僕達だったが、Kの顔は道路の反対の斜め前を見ていた。

不思議に思った僕もKが見ている方を見ると、

子供が電柱の横に立っている。

3〜4歳の男の子だ。

でも明らかに不自然だった。

雨も降っていないのに黄色の傘をさして下を向いている。

小さな長靴を履いた男の子は次の瞬間、電柱の下を指さした。

僕には、何をしているんだろ?という感じしかしなかったが明らかにKの顔は引き攣っていた。

後ろから車が近づいてくる。

夕暮れの道にライトで照らし出された僕達の長い影とは裏腹に子供の影は、なかった。

車が僕達の前を通り過ぎると、子供は忽然と消えた。

昨日の心霊現象から一夜明けた朝方5時。

Kの家に泊まりに来ていた僕は足音で目が覚めた。

Kの部屋は、母屋から離れK専用のプレハブの部屋になっていて敷地の裏側には小さな川が流れている。

そのプレハブの周りをクルクルと、小刻みに小さな足音が聞こえては消え…聞こえては消えの連続だった。

Kには小さな弟がいた為、最初は弟が走っているのかと思っていたが

そうではないと確信した。

レースのカーテン前を通り過ぎる足音が聞こえるのに姿が見えない。

…ふと足音が止んだ。

怖くなった僕は、Kを起こした。

事情を話すと

Kは、『いつものこと』

と、あっさり答えた。

それから数日たった ある日。

親が仲のいい、同級生のお父さんが飲みに うちに来た。

お寺の住職さんで、結構有名なお寺の人だ。

久しぶりに会ったので、挨拶をすると…ふと顔をしかめて、手招きをしてきた。

お小遣いかな?と思い寄っていくと

『やっぱり、変わってると思ってたけど伝染するんでしょ?』

意味不明だ。

意味を聞くと、住職さんが言うには

もともと僕には少しだけ霊感があるらしく

自分より強い霊感を持った人が近くにいれば伝染し、その人と同等の霊感が身につく。

と、いう変わった霊感だそうな。

まるでSFのような、映画のような話だったし

住職さんも酔っ払っていたので信用しなかったけど、

つい最近あった出来事を思い出すと…。

そんなことを考えていたら、左隣にいた住職さんが

僕の肩を叩いて小さな声で

『今から30秒くらい後に、私から少し離れて、リビングと和室の境目の天井を見てみろ。』と、真顔で耳元に囁いた。

怖くなった。

心霊現象を、また目の当たりにするのか…と、内心ドキドキした。

…10秒…

…20秒…

27、28…29…30秒。

ゆっくり顔を上げる。

顔というより視点を上に向けていく。

しかし、何もない。

キョロキョロとキッチン側や、階段側の天井を見ても

何もない。

なんだ

冗談かと思った瞬間

心臓が凍りつく。

急に

右目が見えなくなった。

と、いうよりは暗くなった。

誰かが右目を後ろから手で塞いでいる。

その手は、あまりにも冷たくひんやりしていて

住職さんの手ではないと確信した。

湿っている感じの手だった。

しかも、細いので女性だと思ったが

さっきまで、この場には女性はいなかった。

そして、僕の右耳に

誰かが囁いた。

女性の声だった。

『僕も、見えるのね…。』と。

続く

怖い話投稿:ホラーテラー キトさん

Normal
コメント怖い
0
1
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ