今年の春。高校卒業後、大学の近くのアパートを借り、晴れて私は一人暮らしを始めることとなった。
5人兄弟で真ん中の私は兄や弟達に邪魔されることがないこの生活にそれはもうウキウキしていた。
引っ越し業者のマッチョで汗臭いオッサン達が笑顔で帰って行った後。荷物を片付けようと押し入れを開けた。
押し入れの上にちっちゃい押し入れがあったんで(なんていうか忘れた)そこにあまり使わないものをぶちこんどこうと開け、よじ登りながら荷物を積めると外から見える感じより、何かが奥にあるのか荷物が入れられない。
前の住人のゴミでも入ってんのかと思って懐中電灯片手にちょっとムッとしながら顔を突っ込むと、案の定ごみ袋発見。
キー!ちゃんと処分しとけよー、と思いつつごみ袋を引っ張り出し押し入れに荷物を積め、部屋が片付い落ち着いたところで袋をじっくり観察してみた。
昔からオカルトやらが好きだったので不謹慎ながら思いっきり期待してた。引っ越し先から謎の黒い中身が分からないごみ袋!なんて面白いイベントだろう、と袋を揺すったり、べちべち叩いたりしてみた。
軽くて柔らかい。それが感想だった。死体とかじゃないのかーガッカリーと思いつつ袋を開けると…くまちゃん。かなり埃臭いクマのぬいぐるみが入っていた。
大きすぎでもなく小さくもなく丁度いい感じの大きさ。首に赤いリボンのついた非常にかわいらしいクマさんだった。きっと綺麗だったらさぞかし女の子にモテただろう。
だが残念ながら正体不明のクマ野郎にかまうような乙女ではない私は埃臭いクマをベランダに放り出し、日光にあてダニの滅亡を図ったあとゴミの日に捨てるか、と思い夕飯を買いに行った。
帰宅したのは7時過ぎ。クマのことなど忘れ、ベランダに干しっぱになっていた洗濯物を取り込み夕飯を食べて風呂に入って11時過ぎ、私は一人暮らし、サイコー!と思いつつ布団に入った。
夜中、カリカリという音に目が覚めた。なんだよこんちきしょーと尻をかきながら電気を着けると音はぴたりと止んだ。
電気機器かなんかかな、と思ってトイレに行き、目が冴えてしまったのでテレビを見ているとガタンと押し入れから音がした。
聞いた途端に調べなくては!と思い勢いよく押し入れを開けた。雪崩が発生。原因は荷物を積みすぎたせいと思われる。
馬鹿馬鹿しくなり、起きている事に無意味さを感じ布団に潜りその日は何事もなく私は寝た。
翌日、12時(昼)に起き、バイトの面接から帰ってきた夕方、洗濯物を取り込む際にクマを思い出し市が指定しているちゃんとしたごみ袋にクマを入れようとした。
まだちょっと未練があり、充分にぬいぐるみを叩いて埃を落とそうとしたところ、脆くなっていたのかクマの首が飛んだ。
流石に驚いて首を拾いに行くと中に何か入っている。
ん?と綿の中から何かを引きずり出すと、私は固まった。
なんかちっちゃい機械?が入っていた。
え、これはテレビでよく見る盗聴さんじゃあないか…?
と違う意味にビビりながら大家のおばちゃん家に駆け込み、全て話し物を見せるとおばちゃんは目玉を落としそうに驚愕しながら話始めた。
なんでも私の前の住人は偉く美人さんだったらしく、そのせいでストーカーとか悩まされてたらしい。
大家のおばちゃんにも結構相談に来ていたんだそうだ。警察にも行ったそうだが当時はそこまでストーカーとかにかまってもらえず、結局役に立たなかったそう。
そのうちストーカーはエスカレートし、贈り物やら変な手紙、電話はされるわ職場に噂ばらまかれるわで、結局その女の人は自殺未遂して精神可笑しくなって親が迎えにきたとか。
まぁ誰も死んじゃいないし、部屋もちゃんとそれなりの業者を呼んで片付けたから大丈夫だろうと思っていたそうだ。
そのあとは少し噂がたって一人も入居者はおらず、何年かぶりに私が入居したんだそうな。
おばちゃんは隠してたつもりじゃないと私にひたすら謝って嫌なら出ていってもいいと言ってくれたが、別に誰か死んだわけでもないなら別に私もいいやって感じで今に至ります。
そのあと兄貴が心配して来てくれてなんかそういう機械発見機じゃないけど持ってきてかなり部屋を引っ掻き回したけど、特になにもなく兄貴は不機嫌そうに膨れて帰っていきました。
たまに夜中にカリカリと音がしたり、ぼそぼそ言う音が聞こえたりする以外はなにもありませんが、引っ越し先はちゃんと下見することと、変なもんが出てきたら注意する事をお勧めします。
以上。あまり怖い話じゃなくてすいませんでした。
怖い話投稿:ホラーテラー つかささん
作者怖話