中編3
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じいちゃんの匂い

良くありがちなお話です。自分も経験者の一人なので語らせてください。

私の両親は共働きだった為、近所に住んでいたじいちゃんとばあちゃんによく面倒を見てもらっていた。

じいちゃんは庭いじりが好きな人でいつもお日様と土の匂いがしていた。

私は活発な子供でばあちゃんと家の中で遊ぶよりも、外に出て、じいちゃんの近くで遊ぶ事が多かった。

近所ではすぐに怒鳴り散らす頑固ジジイと有名で私の兄弟も寄り付かない人だったが、いつもくっついて回る私には特別に優しかった。

だから私は自分の家族よりもじいちゃんと仲が良く大好きだった。

小学校に上がると同時に、私の家族は引越しをして都会に住むようになった。

田舎の古い平屋でしか生活した事のない私にとってはまるで別世界。

友達と公園で遊んだり、部屋でゲームをするのが日課になっていた。

あんなに大好きだったじいちゃんと離れる時に大泣きしていた事をまるで忘れていた。

盆と正月位しか顔を出す事もなく遊びに行く時はゲームを持参して、じいちゃんともほとんど触れ合う事もなかった。

じいちゃんは夜遅くまでゲームをする私にガミガミ怒るようになり、私も生意気に反抗したりしてばあちゃんまでも困らせていた。

そんな事もあり、じいちゃんがうるさいからと言い、仕舞いには、留守番をすると言って、顔を出すこともなくなった。

月日が流れ小学5年になった頃、私は自宅マンションで友達と度胸試しと言ってベランダからどれだけ身を乗り出せるか。と言うしょうもない遊びを始めていた。

私の家はマンションの8階であり落ちたらただでは済まない事も承知だった。

いや…まだそんな恐さ分からなかった。

スリルを楽しむ事でちょっと大人になった気分と勘違いしていた。

私は他のビビる奴らを散々ビビりだと罵ってしまった為、奴らが俺に対する期待は大きかった。

私は奴らには出来ない大技を披露しようとベランダに足をかけたが汗で手が滑ってそのまま落下してしまった。

奴らの驚く顔が見えたのは覚えている。

それから落ちて行くときの景色も。

なんとなくだけど地面に着地した瞬間も覚えている。痛くなかった。

夢かもしれないけど。

懐かしい匂いがした。お日様と渇いた土の匂い………じいちゃんの匂いだ。

ハッとすると、そこには知らない天井が見えた。

病院だった。

意識はまだ朦朧としている感じで身体も重たいけどフワフワしているような不思議な感覚だった。

やっぱり夢じゃなくて本当にベランダから落ちたんだ。

『俺どーなってるの?これからどうなるの?どうしよう…どうしよう。』

父も母も誰もいない。急に不安が押し寄せてメソメソと泣き出してしまった。

すると看護婦さんが来てもう少ししたらお父さんとお母さん来るから大丈夫よと言って世話しなく点滴を交換して出て行った。

いつの間にか眠っていたようで次に目を覚ますと父と母が泣いていた。

父『無事で良かった。じいちゃんが助けてくれたんだよ。』

私『???じいちゃん来てたの?あぁ…だからあの時じいちゃんの匂いがしたんだ。』

母『お前がマンションから落ちたって連絡が来るちょっと前にばあちゃんから連絡が来て庭でじいちゃんが倒れたって。病院にすぐ運ばれたけどそのまま死んじゃって…。』

母は泣きながら話してくれた。

じいちゃん死んだんだ…。

じいちゃんとの思い出が走馬灯のように頭を駆け巡り私は号泣した。

じいちゃん。助けてくれてありがとう。

本当だったら俺死んでたはずだけど奇跡的に助かったのはじいちゃんが助けてくれたからだよね。

じいちゃん大好きだったのに冷たくしてごめんね。

偶然とか奇跡って言えばそれですんでしまうけれど、確かにあの時じいちゃんの匂いがしたんだ。

私は今でもじいちゃんが助けてくれたと信じています。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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