短編2
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自動販売機

昨日の夜、TVを見ていたらコーヒーが飲みたくなった。家にスティックタイプのコーヒーがあるのを思い出し、見てみるとちょうどきらしていた。それでも無性に飲みたかった。近くに自販機があり、買いに行くことにした。

家から歩いて3分もかからないとこに自販機があって、どこにでもある砂利の駐車場の入り口にポツンと1台だけある。

上下スウェットでボロボロのサンダルを履き軽装のまま家を出て、小走りに自販機を目指した。さすがにこの極寒の中スウェットのみはかなり堪えるものがあった。少し後悔していると自販機の灯りが徐々に見えてきた。

到着。ポケットから小銭を出し、手の平で数えてると突然「ドン!」と、音がした。ん?と思い周りを見たがシーンと静まりかえっていた。

少し焦ったが気にすることもなく120円を入れ、ホットのコーヒーのボタンを押そうとすると、

「それでいいのかい?」と、どこからともなく声が聞こえた。女の声でかなり低かった。えっ?と思ってまた周りを見ると誰もいない。でもはっきり聞いた。間違いない。

なんとなくヤバいと感じボタンを押すと同時位に今度は…

「それね。また補充だわ。」

小便がチビりそうになりながらも、缶コーヒーを取り出そうと屈んだ姿勢から顔を上げると、自販機の後ろからざんばら髪のババアが顔を出し、

「まいど~」

と、声をかけてきた。聞いた瞬間ダッシュ!後ろを少し振り返るとババアが凄い勢いで追っかけてきた!!

が、10M走ったとこで不覚にもボロボロのサンダルでつまずき大きく転倒。膝を見るとすりむいていて出血。痛がっているとババアがピタッと止まった。息が荒れている。そして俺の目の前で、

「ハァ~ハァ~…ヒィ、ん、ん、ハァ~……フゥ~………わ、忘れ物。フゥ~これ、はい10円。あそこは110円だよ。」

俺は「あ、ありがとう」と言うとニコッと笑い

俺に10円を渡し、振り返るとゆっくり歩きだした。唖然とする俺はその後ろ姿を眺めていた。

ババアは自販機に着くと再び自販機の後ろに。椅子が置いてあってそこに腰掛けた。椅子の下からハンディタイプのTVを取り出し、片耳だけイヤホンをしていた。

それを見た俺はまた小走りに家を目指した。

それから家に着き、念願のコーヒーをポケットから取り出すと…キンキンに冷えていた……買い間違えた……

あそこにはもう二度といかないよ……

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名で★さん  

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