短編2
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黒い靄

「未解決」を体験した、某大手派遣会社の業務担当(以下、業担)をしていた頃の話。

事業所の業担の先輩に、Yがいた。

人間性にかなり問題のある人で、私を含めた新人業担の同期5人中、4人が3ヶ月の試用期間から延長せずに辞めた理由になった。

無論、新人業担のみならず、従業員に対しても問題のある人で、胸糞悪くなるから詳細は記さないが、かなり恨まれていた(某巨大掲示板サイトでは、実名を晒された)。

そんなYが、内臓を患って一週間休んだ。

その週末、事業所の親睦会が開かれ、強制参加ということで嫌々出席した。

相変わらず、鬼のように仕事を押し付けられ、遅れて参加したら、Yが出席していた。

一週間ぶりに見るYの顔は土気色で、傍目にも内臓を患っているのが分かる。

「大丈夫ですか?」

と尋ねると、

「大丈夫じゃないけど、こういう席だからさ!」

と、酒を飲みまくっていた。

私は、まだ夜勤者の出勤次第では確認作業があるかも知れなかったし、教育担当の女性(Nさん)を隣の市まで送るよう言われたので、烏龍茶で何となくいた。

しかし、Yが…いや、Yの背後が気になる。

体が、ドス黒い靄に覆われているからだ。とにかく、良くないモノが憑いているのは分かった。

一次会が終わり、酔っ払い達が二次会だと盛り上がるのを余所に、帰ると言うNさんを送ることにした。

幸い、夜勤者の出勤状況には問題は無かったし、業担の先輩方とは、これ以上関わりたくなかった。

送る途中、Nさんが、

「Yは酷いわね」

と呟いた。

私が、「メチャクチャ顔色悪かったですね」と答えると、

「違うわよ」

とNさん。

「もしかして、あの黒い靄…」と言うと、

「見えたの!?」

と驚かれた。

「はい」と答えると、

「忘れなさい。アレは生き霊よ。それも、かなり悪意のある。関わったら、あなたも危ないわよ」

そう言うNさんに、素直に頷いた。

とにかく、気分が悪くなるほどの気配を感じていたから。

去年の春、久しぶりに現場で働いていた時の同僚Sと電話で話していたら、Yの話題が出た。

辞めた、とのこと。

そういえば、内臓を患ったりしてたなぁ…と言う私にSは、

「違うよ」

「いろいろ問題あったからね、あの人は…」…どうやら、解雇されたらしい。

因果応報なのか、生き霊の仕業か、知りようもない。

その両方のような気がする。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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