長編10
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異業者

兄貴が現場から行方不明になってたから一ヶ月が過ぎた。人一倍、責任感のある兄貴が突然の疾走?。土木工事の現場では珍しくないそうだか、兄貴にかぎって疾走など有り得ない。

捜索願いは提出したが警察は調べてくれる様子はなかった。

どうしても納得できない俺は兄貴の疾走した現場まで調査を行う為に向かった。

兄貴の働いていた現場は樹海の中を貫く国道を工事していた。

現場で働く人達は、近くの街の旅館や仮設の宿泊施設で寝泊まりをしている。

俺は現地に到着してすぐに聞き込み調査を開始することにした。

先ずは、自分の泊まる旅館の従業員に工事の事について聞き込みをするが、特にこれといった情報は聞くことができなかった。

翌朝、現場へと向かい現場の責任者に兄貴のことをきいてみたところ、対人関係や仕事上には、まったく思い当たることはないらしい…。

兄貴…どこに行っちまったんだ…

現地まで来たのはよいが、素人の俺に捜索などできるわけなかった…。

夕方、旅館に戻り自分の無力さに落胆していた俺に一人の作業員が話し掛けてきた。

「弟さんだってな?」

「兄さんのことは諦めな…」

いきなりなんだこいつは?

「早く、ここを離れな」

こいつ!何か知ってる!

「失礼ですが、あなたは兄の知り合いですか?」

「あぁ、俺はあんたの兄さんに世話になってた弟分さ」

「兄はどこに行ったのですか?」

「……………………。」

「早く帰りな…俺にはそれだけしか言えない」

「兄は生きてるのですか?」

「生きていると信じているけど…」

俺は作業員につかみ掛かり、問いただした

「どこに居るんだ!」

「……………………」

「おそらく、深い樹海の森の奥に…」

「じゃ、なんで捜さない!」

「誰も捜せないのさ…」

昔ならわかるが、科学が発展した現在で、樹海の中を探せないことはないだろう。

いくら科学が発達した世の中とはいえ、俺一人で樹海の捜索は困難というより不可能な話だが…

いったん地元に戻り、作戦を練り直すか…

しかし、それでは手遅れかも…

俺は途方にくれていた…

作業員と入れ替わるように、旅館に、また一人の男性が俺を訪ねてきた

「国土交通省 課長補佐 工事外障部門 主任分析官 七海 清です」

ナナミセイ? エリートって雰囲気が漂ってるな。

お役人が俺に何の用があるのかな?

「お兄さんの件で伺いました」

兄貴の!?

「率直に申し上げますと、お兄様は樹海の民に拉致されたと思われます。」

拉致!?テロ!?

「何故、助けださないのですか?」

「警察が動く普通の事件ではないのです。そのため、私が派遣されております」

普通じゃない?

さっきの作業の話といい、この役人の話といい、まるで的を得ない…

「私も二日前から、ここに来てお兄様達の消息を調査し始めたばかりですが、生死の確認は出来ておりません。」

お兄様達??他にも行方不明者がいるのか??

「今回の工事で、合計8名の方が拉致されたと思われます。」

「今夜、救出作戦を開始しますが、貴方も同行しますか?」

願ってもない!どんな手を使っててでも一刻でも早く兄貴に会い…。

しかし、翌朝ではなく、今夜からって?

「では、20時頃にお迎えに来ますので、お食事等は済ませておいて下さい。」

樹海の民って何者なんだろう?

犯罪者集団?邪教集団?

検察庁じゃなくて国土交通省?

話がまるで見えてこないが、今は、このお役人さんに助けてもらうしかないようだ…

19時55分、七海さんが車で旅館に迎えに来た。

他に一緒に行く人はいないようだ。

樹海に入るわりには、随分と軽装だが大丈夫なのか…。

車は工事現場の脇道の林道に入って行く。林道は30分程走ると行き止まりになっていた。

ずっと無言だった七海さんから一言

「ここからは歩いて行きますよ」

歩くって、深夜の樹海を二人だけで?遭難の危険の方が高いような…。

樹海をほんの少し進むと、大きな大きな桂の木が倒れていた。

「あの木の向こう側に民がいます、ここから先は、これを握っていて下さい。民の前では、何を見ても聞いても会話はしないで下さい。勿論、私とも話してはいけません。」

七海さんから、少し大きめの筆の様な木を渡された。

七海さんを先頭に倒れた木の下を潜って通る、体中に生暖かい異様な空気を感じた…

視界に入る木々が蜃気楼のように歪んで見える。

突然、遠くに民家が出てきた!村だ!それも昼間になってるし…

七海さんは、村へと近づいて行く…この人、今日が初めてじゃないな…。

民家の裏手まで来ると、その景色建物に俺はびびった。

小さい!総ての建物が普通の半分以下の大きさで出来ている。

七海さんが無言で村の中央を指差した、小さい!小さい人達がいる!

小人?妖怪?人にしては小さすぎる!

七海さんと俺は、林の陰に隠れ、村の様子を伺っていた…。

そこに居る小人達は現実なのか?兄貴は、この村のどこかに捕われているのか?。

今、目の前に広がる光景も、にわかには信じ難いものがある。

小人達は何かの用意の為に忙しそうにしている。何人いるのだろうか?

アッ?人間!?

意識がないのか?それとも死人か?

担架の様な物に乗せられた人間が村の中央部に運ばれてきた。

兄貴か?

嫌、違う人か…。

いったい何が始まるのか?

げぇっ……………!

小人達は人間を切り刻みだした……

ノコギリとナタでバラバラにしている…しかも楽しそうに…。

俺は気持ち悪くて直視不可能…

七海さんは?…凝視している…。

バラバラにされたカラダは次々に吊されていく

よく見ると、既に吊されている手足や胴体が何本もあった!

うぇ…まじで吐きそう…

奥に吊ってる、手足を網の上で焼きだした…

もしかして食べるのか?

うぇ…食べだした…

七海さんから、喋ってはいけないと注意されているが…やっばりゲロも駄目だよな…

すでに兄貴も食されてたら…ダメだ吐きそう…。

七海さんがゆっくりと立ち上がり、俺の肩を軽く叩いた。

ん?

行動開始か?

ちょっと、ちょっと、おい!待ってくれ!

七海さんは、村に向かって堂々と歩いて行く!

すぐに小人達に見つかるぞ!

あれ?小人達は全く七海さんに気付く様子がない…

俺は小走りで後を追いかけた。

二人で村の中に侵入

相変わらず小人達は俺達に気付かないみたい。向こうからは、俺達は見えていないようだ。

七海さんの後ろに隠れるように村の中を奥へと進むと家畜小屋の様な建物の前まできた。

あれは!兄貴!!

兄貴は生きていた!!

うっ……、七海さんの手が俺の唇に…

危なかった、喋りそうになった。

小屋の扉を開け中に入ると、兄貴が縄で繋がれていた。

兄貴の様子がおかしい!兄貴にも俺達が見えないのか?

小人達と争ったためか、兄貴はカラダは傷だらけだ…。俺は直ぐに兄貴の縄を解いた。

兄貴は不思議そうにキョロキョロとしたあと、部屋の隅に張り付き震え怯えている…。

「うぅぅぅ…助けて下さい、助けて下さい…」

(俺だよ、兄貴、俺だよ!)

喋れないのが辛い…

これから、どうやって兄貴を連れ出すのだろう?

バタン!小屋の扉が勢いよく開いた、小人達か入ってきた!

「ウルサイゾ ニンゲン」

「ドウヤッテ ナワヲハズシタ?」

「助けて下さい、助けて下さい」

「ウルサイゾ」ボコっボコ

(こいつ兄貴に!)

俺は小人に殴りかかろうとした瞬間、七海さんが腕を上げて制止してきたた。

目の前で兄貴が小人に殴られているのを、黙って見ていろというのか!?

「オイ、ニオワナイカ?」

「ニオウナ?」

「ホカノニンゲンガ、ハイッテキタナ」

「サガセ!」「サガセ!」

(ば〜か、目の前だよ)

小人達は小屋の外に飛び出していった

「マダ、チカクニイルゾ」

「クマナクサガセ」

外では小人達がガヤガヤ騒いでいる。

犬並の嗅覚はないようだな。

俺は震え怯える兄貴の身体を抱きしめた。

(俺だよ!兄貴!)

兄貴は驚いていたが、俺だとわかったのか?次第に震えが止まってきた

七海さんが、俺に渡してくれた筆の様な木で、地面に何か書き始めた

「弟さんですよ」

「これから、脱出します」

不思議だ?インクも墨もないのに字が書けているよ

「おまえなのかな?」

(そう俺だよ)

「ダメだ…俺、脚を傷められて歩けないよ…すぐに捕まるよ…」

ここまで来て、残しては帰らないよ、いや帰れないよ!俺が兄貴を担いで行くか?

七海さんが小屋の入り口の方を指差した

担架だ!小人達が死人を運ぶ為に置いてる。

でも、二人で兄貴を担架に乗せて運んだら、すぐに小人達に捕まりそうだけど…やるしかないのか…。

バタン!また小人達が小屋に入ってきた

「ココガ イチバンニオワナイカ?」

「クサイ」 「クサイ」

「ダァレカ イルノカナァ〜♪」

「イタイコトシナイカラ、デ〜テオイデ〜♪」

小人達が俺達の周りを不気味に話しながら嗅ぎ回る…小人とぶつからないように避けるのが精一杯だけど…

七海さんの脱出方法とは?秘策でもあるのか?

「デテコナイナラ、コロスヨ♪」

小人達が、兄貴に向かってナタを振り上げた!

兄貴!!身体が自然に反応してしまった

小人を蹴りあげていた…

「イルネ♪」「イルネ♪」

「シンセンナニンゲンダネ♪」

ボコ!ボコ!バシ!バコ!七海さん!!?

小人達が見えないのをいいことに、蹴り殴り放題ですか!?

よし、俺もいったる!

「オリャー」

あっ…喋ってしまった…

「おぉ〜、ほんとにお前だったんだ!」

兄貴が俺を見えるよになったということは…

もしかして……小人達にも……。

「イタネ♪」「イタネ♪」「オイシソウダネ〜」

バコ!バコ!バコ!

七海さんは、無言で蹴り続けるが、不死身なのか?、何も無かったかのように、小人達は立ち上がってくる。

「こうなったら、しかなたい!」

七海さんが喋った!

「日本国 国土交通省 工事外障部門 課長補佐 主任分析官 七海 清です」

「政府が本気で排除に来る前に解放しなさい」

七海さん!小人達って、政府の方針が通用する輩なのですか?!

「ニホンセイフ?」

「モシヤ、ソノテニ モツノハ!」

『シンボクカ?』」

「オマエハ、ダレダ?」

(俺も自己紹介?違うよね…?)

「ドウリデ、ミエナイワケダネ…」

「わかるようだね、元神なら当たり前か…そう、この手に持つは、榊叢雲剣(サカキムラクモノケン)」

「森の神達よ、裁きをうける前に悪さをやめなさい!」

この残虐な小人達が神様なのか?妖怪にしか見えないけど…

「ニンゲンガ、カミニ、セッキョウカ…」

「クイコロスダケダ…」

「本気だしますよ!あなたは、お兄さんを!」

俺が!?それも、この筆の様な木でどうやって?

七海さんが、木を大きく振りかざす!

筆のような木が変化しだした……………………輝く剣に変化した!!

「私が125代目神武天王 七海 清」

「お前達が神になる前から、日本国の祭を支えてきた者である」

七海さん!ただの役人じゃないのはわかっていたけど、只者じょないね…

あれ?俺の木も変化しだした………………………輝く、鏡の様な盾に変化した

「それは八咫盾です」

「ヤタノタテマデアルノカ…」

「この曲玉を、お兄さんの首にかけて下さい。」

「ソレハ、ヤサカニノタマ……」

なんだなんだ?小人達が弱気になってきてるように見だした

「心を改め、森の神として静に暮らしなさい」

「モウ、オソイワ…」

「ニンゲンガ、オレタチノトコロニハイリコンデキタノダ」

「クイコロス…ジンム!オマエタチモナ…」

小人達の形相が、みるみる変化してきた…。

歯の横側から更に牙が生え、唇が裂け、口角からヨダレが垂れる…まさに猛獣!

「ナマデクイツクス…」

「森の神も堕ちたな…大神(オオカミ)にヘンゲしたか…」

「七海さん、狼ですか?私はどうしたら?」

「こうなってしまったら、獣と似たような類いてすよ!あなたは、その盾でお兄さんを護っていて下さい」

グゥゥ………ゥ…

グゥゥ………ゥ…

グゥゥ………ウゥ…

唸り声をあげながら小人がじわじわと迫ってくる…

「クッテヤル…」

「ウマソウダナ…」

「情けない、大神になって忘れてしまったのか!この盾鏡、剣、玉を前にして、お前達の力など無に等しいのだよ!」

その瞬間!パッ!!

目の前が青白く見えなくなるぐらい光に包まれた。目が痛い……。

七海さんの剣が小人達を次々に切り裂いていく!

凄まじい光景だ…。

5分も経ってないだろう、小人達は全員遺骸になってしまった

「終わりましたよ…また日本から神が減ってしまったか…。」

減った?とりあえず、俺と兄貴は助かったみたい?

「玉と盾をこちらに下さい」

「帰りますか!」

兄貴を担架に乗せ、七海さんと二人で村から車まで運びだした。

「お疲れ様です」

男が二人待っていた。

「交渉は決裂、被害者は一名救出、七名行方不明、神族が一つ滅亡…報告書よろしくね」」

「あと、局長に、もっと早く交渉させてほしいと、伝えておいて!」

「このままでは、神族の数が減り異業者が増える一方だ…」

俺と兄貴は、その男達に病院に連れていってもらった。兄貴は一週間の入院後、自宅に戻ってきた。

兄貴はただの遭難事故…俺は何も見ていない…。

これが、兄貴を助けた代わりに、国土交通省からされた要求だった。

樹海の出口で別れていらい彼とは会っていない…

「七海 清」、今もどこかで交渉してるのだろうな…。

怖い話投稿:ホラーテラー JKさん  

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