短編2
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赤い女

既出でしたらすいません。

かなり有名な話です。

ある日、ちょうど深夜の12時を回った頃のこと。

一人のタクシーの運転手が事務所へ向かって車を走らせていた。

事務所までもう数メートルというところ。

小さく手を挙げている女の人がいた。

タクシーに乗りたいならすぐそこの事務所に行けばいいのに…

運転手は不審に思いながらも女の前で車を止め、ドアを開けた。

無言で乗り込む女。

髪の毛が顔にかかっているせいか暗い雰囲気が漂っている。

もしかしてとうとう出たか…?

そんなことを考えていたとき不意に女が口を開いた。

「…真っ直ぐ行って下さい。」

「あ、はい。」

慌てて返事をし、言われた通り車を走らせる。

「そこを右…次は左でお願いします。」

見た目とは裏腹にしっかりした口調で話す女。

はじめは幽霊じゃないかと強ばっていた運転手の表情も徐々に柔いでいった。

決して明るくはないものの運転手の世間話にもそれなりに応えてくれる。

余裕が出てきた運転手はバックミラーに目をやる。

今までは気づかなかったが髪の毛で目こそ見えないものの鼻筋はスラッと通っており結構美人だ。

「…ここで止めて下さい。」

「ん?ここですか?」

女に言われた通り車を止める運転手。

しかしその周りに民家などはいっさいない。

女はお金を払うと車を降り、暗闇の中を歩いて行った。

引き返そうとしたがどうしても女の行方が気になる運転手。

少しだけ…と、運転手は車を降り、気づかれないように女のあとをつけた。

5分ほど歩いたところで小さな小屋らしきものが見えてきた。

案の定女はそこへ入って行く。

こんなところに住んでいるのか…?

運転手は女が入っていった小屋の前まで近づくとドアノブのあたりに小さな穴を見つけた。

悪いことだとは思いながらも好奇心に負け、ゆっくりと中を覗き込む運転手。

しかしそこには真っ赤な壁のようなものが広がっているだけで何もない。

期待を裏切られた運転手は渋々と車へ戻った。

事務所に着くと若い運転手がまだ一人残っていた。

運転手はたった今の出来事を若い運転手に話した。

「でな、始めは化け物だと思ったんだがそれが意外と美人でさ〜」

そこまで話したところで若い運転手は顔を歪めた。

「その女の人って最近噂になってる赤い女じゃないですか。小さな小屋に住んでるっていう…」

「ああ、たしかに小屋の中に入ってったが…なんで赤い女なんだよ?」

「なんでって…見てないんですか?その女の目、真っ赤らしいですよ。」

その言葉に運転手の顔は一気に青ざめていく。

「じゃああの時俺が見た赤い壁って…女の…」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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