中編3
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投石

もう10年ちょっと前の話。

その頃俺はY県に住んでいた。

高校を卒業して就職一年目、車の免許も取ったばかりだった。

たしか10月頃だったと思うけど、Y県の地方新聞にある記事が載った。

「県道○○号線の山中で陸橋の上から投石。運転手男性は失明の重傷」

こんな感じだったと思う。

その県道は俺が仕事でたまに通る場所だった。

Y県は片田舎だし、県道○○号線も普段あまり交通量は多くない。

事件現場は山あいに囲まれた地域で、犯人は山中と山中とを繋ぐ

古ボケた陸橋から投石したとの事。

陸橋の階段は山中に繋がっているので、県道からは登れない。

いったん山に降りてからじゃないと、階段には行けない造りだった。

犯人はその特殊な構造も利用したのだろう、と書いてあった。

会社の先輩と記事を読みながら、

「ガキがイタズラしたんでしょうねぇ…失明とか最悪ですね…」

って話した。

それから一ヶ月近く経って、仕事でその場所を通る機会があった。

今でも忘れない。空は厚い雲に覆われた曇りで、とても肌寒かった。

夕方五時前くらいに県道○○号線を北上。周りに走行中の車はなく、

事件現場が近づくと、さすがにちょっとドキドキした。

「あれから犯人は捕まったのかなぁ…」

とか考えながら、運転していると、例の陸橋が遠目に現れた。

誰かいる。

その時はハッキリ見えなかったけど、白っぽい服を着た人間が一人で

立って、俺が運転する道路側を見ていた。

「えっ!?」と思いながらも、陸橋はグングン近づく。

女だった。髪は肩まで伸びてて、顔は前髪に隠れてよく見えない。

「まさかあの女じゃないよなぁ…」と思った瞬間、

女が両手をピンッと天に伸ばした。運転中なのでハッキリとは見てないが、

手と手の間にコンクリートみたいな色の物体がチラッと見えた。

俺はその瞬間、ヤバイ!と思って急ブレーキをかけハンドルを左に回した。

キュゥ~~と音がして車は停車。窓から俺が通るはずの道路を見ると、

近くに幅20センチくらいの縦長の大きな石が転がっていた。

俺は慌てて車を降りて、足早に陸橋からちょっと離れた場所で上を見上げて

「なにしてんだ!お前は!!」と怒鳴った。

女はすでに下を見下ろしていた。その時に初めて女の顔が見えた。

目はなんか言葉で説明しにくい違和感のある瞳。

肌は異常に青白くて(今でもあんなに青白い肌の人を見た事がない)

悔しそうに歯をグイーーとしてた。

俺があまりの不気味さに呆然としていると、

「シネッ!シネッ!」と気味の悪い高い声で叫んで、

唾を何回も吐いてきた。

俺は急いで車に戻り携帯から110番。

山中だから圏外かと思ったら、かろうじて電波が一本立ってた。

オペレーターから「危険なので速やかに車で現場から離れてください」

と言われた。俺は怖くて女を捕まえてやろうとは思えなかった。

オペレーターと話ながらちょっと離れて車内から陸橋を見上げると

女が物凄い勢いで陸橋を走り抜け、

タタタタタッと階段を降り山中へ入っていった。

その後は約20分後に到着したパトカーと合流、

一緒に現場に戻って事情聴取された。

パトカーや覆面パトカーが続々集まって、

(全部で7台くらい、警官は20人くらい)

あれこれ聞かれた。実際の被害はなかったけど殺人未遂で

被害届を書かされた。

聴取や被害届の作成でかなり時間をとられた。

翌日からは仕事場のみんなで地元新聞やローカルニュースを

注意深く探したけど、まったく報道されてなかった。

その後は仕事の都合で嫌々ながら何度か同じ道を通ったけど、

あの女が再び現れる事はなかった。

捕まったとか、被害者がまた出た、というニュースもなかった。

警察からの連絡や接触も、当日からの数日間しかなく、

以後なにも聞かれていない。

二年後に、仕事を辞めて地元に戻ったのでその後の事も知らない。

ただ、俺を聴取した50代くらいの刑事が言った一言が忘れられない。

「実はもう何人も実害が出てるから捕まえたいんだけどねぇ…捕まえられる相手

なら良いんだけどねぇ…」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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