短編2
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少年の想い 5

僕は朝1番に駅前にあった交番に向かった。

『あの…』

『はい、どうしました?』

四十代くらいの人の良さそうなお巡りと、二十代後半くらいのお巡りがいっせいに僕を見た。

覚悟してきたが、足が震える。

『あの、僕…あそこに置いてある自転車…。

僕が盗んだんです…』

『君が?』

ちらりと二人が顔を見合わせる。

『座りなさい。』

僕を座らせると、何か紙を取り出し 若い方に自転車を見てくるようにと言った。

『それで?どこで盗んだの?』

『それ…は、わかりません』

『わからない?じゃあ、名前を言いなさい。』

『〇〇×××です』

『歳は?』

『二十歳です。』

『住所は?』

『〇〇市の△△町です』

『は!?〇〇市?ここまで何で来たんだね!?』

『歩きと…自転車です。』

『そんな…あそこからここまで300kmはあるんだぞ!?何故電車などを使わなかったんだ?』

『…お金が無かったんです』

『今持っているのは いくらなんだ?』

僕はポケットを探ると、残ったお金を机に置いた。

『10円だけ?』

『はい…』

『ふぅむ…』そういうと、お巡りは椅子に座り直した。

その時若いお巡りが入ってきた。

『確認取れました。T県の〇△町から昨日盗難届けが出ていて、その自転車と一致しました。』

『〇△町…君の住んでいた場所から80kmは離れている。そこまでは歩いたのか…?』

『はい。』

『なんでそこまでしてここへ来たんだね。』

『弟に…伝えなければいけない事があるんです。』

『伝えなければならない事?』

『はい…父が亡くなったという事を…』

僕は全ての事を吐き出した。二ヶ月前に入院した父が亡くなった事。 病院にお金を払ったら、ギリギリだった事。生活にまわすお金がなくて、電話も止まっている事…。

歩く事に疲れて 自転車を盗んでしまった事…。

『本当にすみませんでした!』

僕は、頭を下げ謝るしか出来なかった。

それを見ていたお巡りは

『とにかく盗んだ自転車は、持ち主に返さなくてはならない。君も来なさい』

と言った。

そして折り畳んだ自転車と一緒に、パトカーに乗せられた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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