パトカーに揺られながら山道を登る。
車で来てみて この道のりはこんなに 綺麗だったのか、と思った。
ふと 今日見た夢を思い出した。
『□□寺…』
思わず呟いていた。
『ん?どうかしたか?』
助手席に乗っていた 年輩のお巡りが、後ろを振り向き聞いてきた。
『あ、いや何でもないんです…。ただ、夢で父が□□寺の事を言ってたので…。
ホントにあるのかな、と思って。』
『あるよ、□□寺。』
今度は 運転していた若いお巡りが話してきた。
『□□寺がどうしたの?』
僕はもう一度、夢だから、と念を押してから 昨日の夢を話しはじめた。
話しを聞き終えた年輩のお巡りは、
『ん〜…。』と唸り、次に手帳をぺらぺらとめくり、携帯を何やら操作してから いきなり携帯を僕に手渡した。
『え?なんですか?』
『□□寺の番号はもう入れてあるから、電話してみなさい』
『は!?』僕は驚いた。
『ゆ、夢の話しって言ったじゃないですか!』
『いいじゃないか。向こうが何も知らないなら、間違えました すみません、で済むだろう?
まだ目的地には着かないんだから、やって損はしないさ。』
そんな馬鹿な。しかし、早くとせき立てるので 僕は通話ボタンを押してしまった。
すぐに受話器から『もしもし』と、お爺さんの声が聞こえた。
『あの、あの…僕、〇〇と言います』
パニクって 上手く話せない。
『〇〇…?しげちゃんとこの息子さんかい?』
『は、はははい!そ、そうです!』
『そうか…わしのとこに連絡が来るという事は…。
そうか…。大丈夫、安心しなさい。今からそちらに向かうから、夜には着くだろうよ』
そう言うと 電話は切れてしまった。
呆然としている僕に、お巡りが『どうだった?』と聞いてきた。
『なんか…父の事を知っていたみたいです。』
何故かお巡りは うんうんとうなずいていた。
しばらくすると 僕が自転車を盗んだ家に到着した。
家の人が出てくる。30代くらいの女の人だ。
お巡りとその人が話している間、僕はパトカーの中で縮こまっていた。
少しして出てくるように言われ、俯きながら女の人の前に行き謝ろうとした時、
『ゴメンね〜、うちの母が勘違いしちゃって!
あたしが君に貸したのに、盗られちゃったと思ったみたいなの』
と その人は言った。
は?え?
僕が目を丸くしてると、若いお巡りが下がってと言うように手で少し押した。
『じゃあ、このまま家に送ります。』
と言って、パトカーにまた乗せられた。
僕が何か言おうとすると、若いお巡りが小さく首を振った。
僕達はアパートに着くまで、ずっと無言だった。
次が最終話です、長くてすみません!
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話