短編2
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少年の想い 最終話

アパートに着くと、

『これからは無茶をしないように!』

とだけ言い残して、パトカーは去って行った。

僕は、階段を登り 自分の部屋へ入った。

部屋は寒く、外の方が暖かいくらいだと思った。

『ただいま、父さん…』

僕は居間の布団に寝せられている父に言った。

そして側に座り

『あいつには会えなかったよ…ごめんな。』

と謝った。

僕一人しか見送る人がいなくて ごめんな…。

こうして父を見ると、少しやつれているが まるで寝ているようにしか見えない。

病気が発覚してから、たった二ヶ月で死んじゃうなんて。

早過ぎるよ…。

泣きそうになっていると、ドンドンドン!とドアを叩く音がした。

お寺の人が来たんだろうか?

ドアを開けるとそこに立っていたのは、弟だった。

『ごめ…、兄ちゃん。俺、俺…間に合った?』

頭はボサボサで風貌こそ違うものの、息を切らし目の前に立っているのは まさしく弟だった。

『お、お前…』

声が出なかった。

『ゆ、夢を見たんだ!親父がもうサヨナラだって。元気で暮らせって。

だから嫌な予感がして、俺…』

そこまで言って弟は、布団の中にいる父に気がついた。

『親父…親父ー!』

弟は靴を脱ぐのも忘れて、父に駆け寄った。

そして、間に合わなくてごめん、会いに来なくてごめんと、父にしがみつきながら 泣きつづけた。

それを見て 僕もまた 泣いた。

つっぱっていても、父を誰よりも好きなのは 弟だという事を僕は知っていたから…。

少ししてお寺の住職と数人のお供の人がやってきた。

『しげちゃんよ…約束どおり、わしが全部やってやるで…安心しなさいよ。』

と住職さんは、父に向かって言った。

とても優しい声だった。

『それじゃ、お寺にお父さんを運ぶから。

あんたらは 用意して下の車に乗りなさい。』

そう言うとかけてあった布団を、そっとめくった。

その時、僕は父が何か握っている事に気がついた。

なんだろう…?

近づいて見て、僕はそれがなんだか わかった時…声をあげて泣き出してしまった。

父の手には、あの傷薬が握られていた。

『子供は いくつになっても子供だ…』

父の声が聞こえたような 気がした……。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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