中編5
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廃虚病院

これは私が大学生の頃に体験した話です。

私が通ってる大学から少し歩いたところに今は廃虚となった病院があります。

病院の外壁には○○総合病院と書かれていて結構大きな病院でした。

廃虚病院ということもありこの近くではかなり有名な心霊スポットとなっていました。

しかしその病院は昼間でも何か近づいてはいけないような異様な雰囲気を漂わせており、まともに中へ入ったという人の話は聞いたことがなかったのです。

当時大学生だった私たちは好奇心が旺盛でオカルト好きだったのもあり、私を含め仲が良かった3人で肝試しに行くことになりました。

時刻は深夜0時。

私とその友人たち(仮にABとします)は携帯電話と懐中電灯だけを身につけ病院の前に集まりました。

暗闇の中に浮かぶその病院は一段と気味が悪く見えます。

私は今になってここへ来たことを後悔しました。

A「よし!みんな揃ったし入るか。」

啖呵を切ったのはAでした。

私とBもおそるおそるAのあとに続きます。

中は思っていたほど荒れてはいませんでした。

入って少し進んだところで目についたのが手術室です。

Aは真っ直ぐそこへ向うと何のためらいもなく扉を開けました。

私「おい!ちょっと待てよ。」

A「いいから早く来い。」

B「………」

Bも何か嫌な空気を感じたのか私のうしろで勝手に行くAをただただ見つめていました。

私とBは顔を見合わせると先に行ってしまったAを追うように仕方なく手術室の前まで行きました。

A「見てみろよ!これ血じゃね?気持ちわりぃな。」

Aが手にしているメスには確かに血のようなものが付いていました。

よく見ると手術台にも赤黒いものが付着しています。

B「もういいだろ?早くここ出ようぜ。」

私「そうだな…。」

A「なんだよ、もう行くのかよ。」

手術室を立ち去る私とBに続き、Aも渋々と手術室をあとにしました。

この時誰かがもう帰ろうと言えばよかったのですがそのあともAを先頭に私たちは病院の奥へと進んで行ったのです。

階段を上るとそこには『内科』と書かれていました。

私たちはナースステーションから順に探検し始めました。

始めは怯えていたものの徐々に慣れてきたのもあり、それぞれが別々なところを探検していました。

特に変わったところもなくそろそろ次へ行こうとした時、あることに気がつきました。

Aがいないのです。

Bは少し離れたところにいるのが確認できるのですがどんなに周りを見渡してもAの姿がありません。

私とBは合流するとAを探し始めました。

しかしやっぱりAはいません。

B「もしかして違う階に行ったんじゃないのか…?」

Aのことだ。

確かにありえなくはない。

私「上行ってみるか…。」

この時点でもう帰りたくなったのですがAを置いて行くわけにもいきません。

私とBは階段を上り3階へ移動しました。

そこには『外科』の文字が…。

それを見たとき私は何か嫌な予感がしました。

B「おい、何か聞こえる。」

Bにそう言われ耳をすますと確かに誰かの話し声が聞こえます。

この時恐怖は限界を越えていましたがこのまま逃げ出すわけにもいきません。

おそるおそる声が聞こえる方へ向かいました。

A「はい…そうですか…はい…わかりました…。」

少し進むとその声はAのものだとわかりました。

声はどうやら診察室から聞こえてくるようです。

B「Aか…?いるのか?」

返事がありません。

私は診察室のドアノブに手をかけるとゆっくり開きました。

そこにいたのは椅子に座ってぼーっとしているAでした。

その異様な光景は今でも目にやきついています。

私「おい!何やってんだよ!心配したんだぞ!」

私は恐怖から逃れるため、Aに向かって精一杯叫びました。

A「…ああ…悪い。」

気のない返事をするA。

B「なあ…もう帰ろうぜ。気味悪いよ。」

A「そうだな…。」

さっきまで一番おもしろがっていたAがすんなり賛成するなんて…

少し不思議に思いましたが今は自分も帰りたい一心だったので速足で病院をあとにしました。

家に着いた時にはすでに3時を回っていました。

次の日まだ眠い目をこすりながら学校へ行くとBが慌てた様子で私に近寄って来ました。

私「どうかしたのか?」

B「Aのやつ今日来てないんだよ。」

私「どうかしたのかな…?」

始めは昨日の今日で寝坊でもしたのかと思っていました。

しかしその次の日もAは来ませんでした。

私とBはさすがに心配になりAに電話をしてみることにしました。

56回コールしたところでAは出ました。

私「お!Aか?お前昨日も今日もどうしたんだよ?」

A『ああ…心配かけて悪いな…ちょっと体調悪くて…実はさ…俺病気みたいなんだよ…。』

私「は?病気って何だよ?一昨日あんな元気だったじゃねぇか。」

A『まあな…でも一昨日あの病院で診察してもらった時言われたんだよ…。』

私「一昨日…?お前…何言ってんだよ。そういう冗談笑えねぇって!」

A『はは…冗談じゃねぇって。なんか結構重症らしくてさ…俺これから手術なんだ…。』

Aは本気でした。

私はどうしようもない恐怖を感じ身体中に一気に鳥肌が立ったのがわかりました。

私「…手術って…どこで…?」

A「どこって…○○病院に決まってんだろ。」

○○病院…。

私はその言葉を聞いた瞬間電話をBに押し付けていました。

震えが止まりません。

Bは私の尋常じゃない態度にきょとんとしていましたがすぐに受話器を耳にあてました。

どうやらBもAから事情を聞いているようです。

その間も私はただただ耳を塞ぎじっとしていました。

Bの表情がみるみるうちに変わっていきます。

A『じゃあ…もうすぐ始まるから…。』

Aはそう言うと電話を切りました。

私たちはどうすることもできずただ時間だけが過ぎていきました。

その日からAとは連絡が取れなくなりました。

Aは何の手術をしたのでしょうか?

今もあの病院に通っているのでしょうか?

それとももう………。

あれから10年。

さすがにあの廃虚病院も取り壊されましたがAの行方は今も不明のままです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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