短編2
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ミルク

今年天に還ってしまったけど、我が家に白い猫がいた。

捨てられていて、烏に頭を突かれていたのを、弟が拾ってきた。

両親は弟には甘いので、別居している弟に押し付けられたけど我が家の一員になった(拾ってきたのが私だったら、間違いなく拒否る)。

ミルクと名付けられたその猫は、凄く人懐こい子で、私によく懐いて一緒に寝るようになった。

不思議と、この子といる間は霊体験や悪夢を見たことが無い。

白い動物は神様の使い、と言うから案外守護してくれていたのかも知れない。

不思議と、毎朝6時過ぎると何かしらして私を起こす。

おかげで規則正しい生活をしていた。

ある日は、腹にドスッ!という衝撃に「ぐえっ!」と呻いて目が覚めた。

ミルクが私の腹を踏み台に、棚に飛び乗った衝撃だった。

怒る気にはならなかった。

ある日は、枕元でチャッチャッチャッと音がする。

枕元を見ると、ミルクが後ろ脚で立って、前脚で割り箸を回して遊んでいた。

目が合った時の、

「あ…」

という顔でフリーズしたのが懐かしい。

器用な子だった…。

このままだと、「サイト違い」とお叱りを頂きそうなので、ちょっと不思議な体験を。

ミルクが天に還ってしまって、落ち込んでいたら、顔をフワフワしたもので撫でられた。

「あ…」

何度か経験があるその感覚…生前、ミルクが私が落ち込んでいる時に、必ずした尻尾で顔を撫でる感覚だった。

「悲しまないでよ」

と言われている気がした。

ミルクはそこに、いなかったけど。

その後も、しばらくはいろいろあった。

私の部屋の前に来た時の合図…軽く一回、

トン…

と廊下の床を鳴らす音。

ドアを開けても、ミルクはいない。

お気に入りの場所だった、私の部屋の窓辺からテレビに乗った時の音。

勿論、ミルクの姿は無い。

ミルクの姿は見えないけど、家の中を散歩していたんだろうな…と思う。

そして、ある日を境に…明確じゃないけど、おそらく四十九日が過ぎてから、ミルクの気配は消えた。

ちゃんと、夢の中で挨拶していった。

両親はミルクを喪ったショックが大きいので、しばらくは猫は飼わないだろう。

でも、私はまた何時か猫を飼いたい。

犬好きの私を猫好きに変えてしまった、ミルクと同じ、白いペルシャ猫を。

怖い話投稿:ホラーテラー 元業担さん  

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