中編3
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共同戦線−戦いのあと−

俺はそのまま家には帰らず、寺へと向かった。

帰る気にはなれなかった…。

「すいません…あの、誰かいませんか?」

ここへ来た時に通された、奥の部屋の戸を叩いてみる。

少ししてから、住職様が驚いた顔して戸を開けてくれた。

「…終わったのですね?さぁ、お入りなさい。」

部屋に通され、座布団に座る。

「よくぞ無事に戻って来ましたな。

あなたの顔を見て 安心しました。」

「無事だなんて…。僕は守られてばっかりで!

何もできなかった…」

涙が溢れてくる…。

「俺は大事なものを、何一つ守る事ができなかった!

全て失ってしまいました…」

静かに俺の話しを聞いていた住職様は、不意に俺を抱きしめた。

「あなたの命がこうしてあるじゃないですか!

これ以上の勝利がありますか?

あなたとあなたの仲間は、悪しきモノに勝ったのです。

あなたがこうして生きている事!それが全てなのですよ。」

俺はたまらず 声を出して泣きだした。

「でも、俺のせいで…。みんな消えてしまいました…。

俺が弱いせいで!」

住職様はそっと俺を離すと、

「私が言った事、覚えていますか?」

と言った。

「え…?」

「私は、あなたは強いと言いました。

自分で思っているより、ずっと強いのだと。」

「………」

「あなたの力がなければ、出来ない事があります。」

俺じゃないと出来ない事?

「今それを見せてあげましょう。

水晶はお持ちですかな?」

「あ、はい…!」

ポケットを探り、水晶を取り出した。

「あっ!」

水晶は淡く輝いていた。

これは一体…?

「さぁ、それを手の平に包み込んでください。

そして、念じるのです。

あなたの望むモノ達を戻せと!」

オッサン達を?そんな事が俺にできるのか!?

俺は水晶を握り、精神を集中させる。

なんでもいい!出来る事があるなら なんでもやってやる!

にわかに光が強くなってきたように感じる。

オッサン!カール!チョビ!

俺…また皆に会いたいよ!

輝きはどんどんと増していき、手の平から溢れる光は眩しくて 目を開けていられない…

ボンッといきなり音がして、手の中の水晶は粉々に砕けちってしまった。

「じ、住職様!?」

「やはり…あなたの霊力は、私など足元にも及ばない。

ただ、使い方を知らぬ 赤子のようなものなのです。」

「えっ?一体なんの話しを…」

その時、肩をぽんと叩かれ 後ろを振り向く。

そのままあんぐりと 口を開けたまま、俺は固まってしまった…。

カールが優しく微笑んでいた。腕もちゃんとついてる!

カールの後ろから、オッサンがひょっこりと顔を出す。

「わしもいるぞ!」

「オッサン!」

チョビが俺に擦り寄ってくる。

「チョビ…良かった…!」

涙が止まらない。こんな事って…夢じゃないよな?

「あなたに渡した水晶は、あなたの仲間を吸収し保護する為の物でした。

しかしそれは、あなたの霊力がないとできぬ事。

水晶から解放するのも、あなたにしか出来なかったのです。」

「住職様…本当にありがとうございました!」

俺は、頭を床につけ礼を言った。

「いえいえ。おや、この猫は 私の膝が気にいったようですぞ?」

見ると、チョビが住職様の膝に乗り、あくびをしていた。

「あ、こらチョビ!」

「良いのですよ。今日は皆さんお疲れでしょう?

よろしければ 泊まっていっても」

「いえ」

俺達は顔を見合わすと

「家に帰ります!」

三人で声を合わせて言った。

家までの帰り道、俺達は笑いながら帰った。

他の人がもし見ていたら、さぞかし不気味に思っただろう。

何しろオッサン達が見えないのだから。

でもいいさ、今日だけは。

チョビの尻尾は戻らなかったが、嬉しそうに俺を見上げながら ついてくる。

今夜はみんなで眠ろう。

明日からは いつもと変わらない日常が始まる。

俺達の毎日が…。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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