短編2
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最後の挨拶

 幼なじみ(A)は物静かな男だった。そして優しい奴だった。Aとは幼稚園から中学まで一緒で、部活やクラスが違っても、話をしたりたまに一緒に帰ったりしていた。

 別々の高校に入ってからは会う機会が減り、次第に遊ばなくなっていった。

 地元を離れ、県外の大学に進学して初めての夏。蒸し暑く中々寝付けない夜だった。寝苦しさを感じながらやっと眠りに落ちた…と思ったその時、

「コンコン」と玄関をノックする音が。

 せっかく眠れたのに!と少し苛立ちながら玄関に行き、誰ですかと尋ねても返事はない。聞き間違いかと思い、覗き穴から覗いてみると男らしき黒い影が立っているのが見えた。

 もう一度、誰ですかと尋ねても返事はない。

思い切ってドアを開け、「誰だよ?」と尋ねた。 目の前には黒い影がぼんやり立ちすくみ、顔ははっきりと見えない。

話しかけても全く反応がなく、気味が悪くなりドアを閉めた。半分寝ぼけてたのもあり、そのあとはすぐ布団に入って寝てしまった。

 バイトやサークルなどで忙しい日々、そんな出来事はすっかり忘れていた。

 夏、秋が過ぎ、クリスマスも近くなった頃、人づてに聞き初めてAの死を知った。

葬式は親類だけで行ったようで、地元に残っている友達も少なかったので、知ったのがかなり遅くなった。Aは夏に事故で亡くなったと聞いた。

夏?そういえばあの時不思議なことがあったよな…と思い出した。

 ………………………  俺はあの黒い影はAだったのだと確信している。俺に最後の挨拶をしに来たのだと。Aは俺に何を伝えたかったのか。今となってはわからない…俺はAの分まで頑張って生きていこうと思っている。

 霊感ゼロの俺の唯一の体験でした。

怖い話投稿:ホラーテラー まさむねさん  

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