中編6
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白い塊

 

この間、実家に帰った時にあった話ですが。

 

 

 

 

 

県名などは伏せますが自分の実家は結構辺鄙なところにありました。立派なビルなんて建ってないし、駅も自分が生まれた時からまったく変わっていません。自分はもう成人しているのですが、高校時代は通学に時間がかかり、とても大変でした。この間帰った時も、朝出発したにも関わらず、実家に着いた時には既に辺りは薄暗くなっていました。

 

 

両親にお土産を渡した後、ずっと乗り物に乗っていて疲れていたのでしょう。自分は直ぐ母親に布団を敷いてもらい、寝てしまいました。しばらくして起き、携帯で時刻を確認すると、もう明け方になっていました。なんだか二度寝する気にもなれず、取り敢えずぼーっとしていました。

 

 

やっぱり、こっちの空気は美味しいなあと呑気に考えいると何かの物音が聞こえてきました。実家では生き物は飼っていません。しかし、時たま野良猫や野良犬が入ってくることがあり(中学生時代には、昼寝していた自分に猫が集まってきたこともあります。)最近動物とふれあっていなかったことと、元々動物好きなところもあるので可愛がらしてもらおうと、物音がした方向にゆっくり向かいました。

 

 

この時点で、両親がトイレに起きた時の音やただの家鳴りだと思わず、動物だと決め込んでいた自分は既に見入られていたのでしょう。

 

 

 

 

 

しばらく家の中を探していると、玄関の方から物音がしていることに気がつきました。実家の間取りを皆さんに上手く説明する自信がないのですが、玄関から入ると一直線に廊下と階段があり、その廊下の両脇に部屋があり突き当たりには台所があります。 自分は二階で寝ていました。なので玄関に行くには階段を使います。階段を降りていくと、中段あたりでようやく玄関が見えました。そして、玄関には白い塊がありました。白いと言うか発光、とまではいかないんですが何だかぼやけているんです。 

 

自分はその時白ネコだ!とうきうきして構いに下に降りようとしたのですが、違和感がありました。ぼやけて見えるのは寝起きでピントが合わないとして、その白ネコがとても大きい、大きすぎる。しかも本当に塊で、頭やしっぽや耳が見当たらないんです。丸まっているのかな?と思ったのですが少し可笑しい。

 

 

そしてしばらく考えあぐねていたのですが、もう1つ可笑しなことに気がつきました。最初に中学生時代の体験談をしましたが、それは網戸を開けきった部屋で寝転んでいたから十分外から猫たちは入れます。しかし、玄関からどう入るのか。戸を開けるにしても立て付けが悪く、自分だって開けるのに一苦労します。猫に開けられるとは到底思えません。それにこんな田舎ですが、両親は玄関に鍵を掛けます。侵入はできません。それでは、この白猫はどうやって入ったのでしょう?と言うかこれは白猫なのでしょうか?

 

 

そう考え着いた時、一気に恐怖が湧いてきました。早く布団に帰ろうとしても足は動きません。そして白い塊から目が離せないのです。なんとかこの状況から抜け出そうと色々しましたが、どうにもいきません。そして一時間か十分か経った時、状況は変わりました。白い塊が動き出したのです。

 

 

うねうねと体を揺らし、しばらくすると突起が生え始めました。突起と言っても、塊が大きいので子供の手位あります。突起は少しずつ伸びていきました。そして子供の腕位になると、いきなり床に打ち付けました。

 

 

 

ビタンッ ビタンッ

 

 

 

 

打ち付ける、と言うよりのたうち回っていました。突起と言うより触手(?)のようなそれはのたうち回りながら伸びていきます。しばらく呆然とその状況を見ていた自分ですが、あることに気がつきました。

 

 

こっちに来ている。

 

不規則にのたうっていますが、確実にこちらに近づいています。逃げようとしました、しかし足は動きません。足に力を入れていましたが、足はピクリともしません。歯を食いしばり、上を向いて力むと、足が動きました。

 

 

よし!と足を見ると、触手が足を掴んでいました。次の瞬間、ものすごい力で引っ張られました。当然階段を転がり落ち、しこたま頭を打ち付けました。しかし頭を気にするより、体を持っていかれることの方が大変です。なんとか階段の手すりを支えている支柱にしがみつきました。

 

 

触手は自分の足を床に打ち付けていました。どうやら触手は一本しか生えないらしく、白い塊は苛立ってるようでした。しばらく攻防が続き、もう精神的に参ってしまいました。腕も力が入りません。もう駄目かと覚悟した時、急に猫の鳴き声が響きました。

 

 

すると、触手の感覚がなくなりました。恐る恐る後ろを振り返ると、白い塊はいません。どうやら自分は助かったようで、途端に疲れが出て寝てしまいました。 

 

 

 

 

悲惨な状況で両親に見つかった自分は、急いで病院に連れていかれました。病院とは名だけでこじんまりとした個人病院で、おじいさん先生が一人と親戚の叔母さんが看護士をしていました。足の打撲を診察してもらっている間、診察にいたおじいさん先生と父親に白い塊の話をしました。

 

 

すると、おじいさん先生は厳しい顔をしてもしかして、と話し始めました。

 

 

 

 

 

 

途中、雑談などが入ってしまったので会話をそのまま載せるのではなく自分の方で要約させて頂きます。

昔、自分の田舎では動物の命を軽く見ていたらしく、動物に命を頂く感謝や供養をしていなかったそうです。その時丁度病気が流行ったり、災害が起きて人が大勢死んだらしく、動物たちを無下にした祟りが原因ではないかという話になったらしく、きちんと動物を供養し始めるとぴったり病気が無くなり、災害が起きなくなったようです。

 

 

これは、祟りイコール動物の霊魂が悪さをしているということで動物を捕ることが少なくなり、野菜を食べる量が増え肉中心では足りない栄養素を採ることで病気に負けなくなったことと、災害はその年のがたまたまそういう時だったらしく、本当は祟りなど無かったのです。

 

 

むしろ、人間が祟りを作ってしまったのです。供養のため今は無いのですが、地蔵を置き、人々はお供えものをし祈りを捧げます。すると、空っぽの地蔵に何か良くないものが宿ってしまったらしいのです。どこから流れてきたのか図々しいそれはお地蔵様に居着いていました。しかし、時間が流れみんな祟りなんて忘れてお供えものもお祈りもしません。そして地蔵は風化し、崩れ無くなってしまいます。そこでお地蔵様に居着いていた悪いやつは困ってしまいます。またどっかに流れて行くにしても、流れ着いた先で力をつけられるとは限りません。

 

 

悪いやつはしかたなく、悪いやつはここに居続けることにしたらしいのです。動物の祟りとして存在していた悪いやつは動物に手を出す訳にもいかず、人間に手を出すしかない。今回は、自分が標的だったと言う訳です。あの白い塊はその悪いやつでした。

 

 

 

 

 

 

治療が終わってから父親から玄関の外に猫がいた、とのことでした。猫と聞いてびくりとしましたが、話を聞くとぶち猫が玄関の外で仕切りに鳴いていたそうで、両親は鳴き声に起き自分を見つけたそうです。実家に帰ると、母親がぶち猫に餌をあげていました。母親が言うに、最近餌を貰いにくる野良猫のようです。自分が近づくと、包帯の上から足を舐めてくれました。どうやらこのぶち猫が自分を助けてくれたようです。

 

 

動物に手だしできないやつは、この猫に負けたのです。

 

 

一人暮らしのため、不安で猫を連れて帰りたかったのですが両親が心配なので、番犬ならぬ番猫と言うとこで実家で飼うことにしました。話はここで終わりですが、最近街を歩いているとどこからともなく猫が寄ってきます。猫の神様でも自分にはついているのではないかと本気で思うようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(創作って難しい。)

怖い話投稿:ホラーテラー 紫緒さん  

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