短編2
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手形

オレの部屋には手形がある

黒く小さな手形が、壁の上の隅っこの方にチョコンとある

オレはそれを何度も拭いたが、気付くとまた同じ場所についている

1度、壁紙も張り替えたが、それでも同じところに同じ大きさの手形が出来る

それも徐々に黒くなって

オレには3歳の妹がいる

3歳にもなると、いっちょまえに普通に話が出来るようになった

妹の仕業かとも思ったが、高さてきに届くはずもないし、イスなどを使ってもギリギリとどくか、とどかないか位の位置

それにイスなんてものを運べるはずもない

しかしそんなある日

帰りが遅くなり、家族が寝静まった頃に帰宅したときのこと

オレの部屋から微かながら物音が響いていた

それは誰かの話し声であるかのようだった

オレがそうっと部屋に近づくと突然扉があいた

「あ!にぃちゃん」

妹だった

なんでこんな時間に起きているんだ。というより、なんでオレの部屋にいるんだ?

そう思い、部屋に目をやると、あの黒い手形がたった今付けたかのようにベットリと赤黒く染まっていた

オレは妹を見た

しかし妹はいつも通りだ

確認のため手も見たが、全くおかしなところはない

「どうちたの?にぃちゃん?」

若干の赤ちゃん言葉で話す妹もいつも通り

「にいちゃんの部屋で何してたの?」

「ううん!なんでもないのよぉ!」

「てかはやく寝なさい!良い子は寝てる時間だよ!」

「はあい!」

オレの気のせいなのか?

でも確かに手形が前よりもはっきりとついている

少し怖くなったが、早いとこ寝て忘れてしまおう

「はやく寝なよ。おやすみ」

「おやちゅみ~」

そしてオレが部屋の扉を閉めようとしたとき、妹が言った

「ねぇねぇ!」

「ん?なあに?」

「ねぇ••••••まだ気付かないの?」

えっ?

オレの聞き間違いだったかもしれない

しかしあの時の妹の顔

にやけた口元に、眉間にシワをよせた顔は今まで見たこともない表情だった

それに、あのとき妹の目線はオレではなく、確かに後ろの手形を見ていた

それから妹はチョコチョコと親のいる部屋にもどっていき、後日も変わった様子はみられなかった

今ではオレの勘違いだったのだろうと思っているが、手形は相変わらずそこにある

しかし最近気付いたが、よく見ると手形が大きくなっている

勘違いなら良いのだが

あの言ったときの妹の声

オレには2重に聞こえ、もう一人別の声がした気がする

妹はいま小学3年生だ

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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