短編2
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崖の上のクネクネ

皆さんは「クネクネ」なるものを知っていますか?

「クネクネ」とは、大きな粘土の固まりのような胴体に数本の手(触手?)。苦悶や怒りの表情を浮かべた幾つもの人の顔が数秒毎に歪みながら入れ替わる、誰が見てもこの世のモノではないとわかるものです。

今回はその「クネクネ」についての僕の体験談を話します。

4年前の元旦の日の朝。当時、僕は高校生で友人4人と一緒に、初日の出を見る為に地元の山に登りました。

午前5時頃に登り始め、山頂に辿り着いて10分位で初日の出を拝む事ができ、目的を果たしたので下山する事になり、登ってきた山道を降りていきました。

その山には1ヶ所だけ山肌が削り取られ、かなり急な崖の様になっている場所があり、地形上、登る時も下る時もその崖が見える様になっています。

丁度その崖が見える所まで下った時、友人の一人が、

「何やアレ?」

と言って崖の上を指差しました。

そこにはクネクネと動く灰色の'何か'がいました。

それは僕らが登ってくる時にはそこには確かにいませんでした。

別の一人の友人が、おおよそ初日の出を見るのには使わないであろう小型の双眼鏡でその'何か'が何なのかを確かめようとしました。

僕は双眼鏡を覗いていた友人がその'何か'を見て、その顔から血の気が引いていくのが分かりました。

僕は友人から双眼鏡を借り、その'何か'を見ました。

その瞬間、僕は友人達に

「逃げよう。」

と言いました。

それを見ていない友人達が

「俺にも見せろや」

と言って僕から双眼鏡を取り上げた瞬間──

奴が気付いた。

奴は崖を滑るように降りてきて僕らの方に向かってきました。

僕は無我夢中で必死に逃げました。友人達も僕に続いて走って逃げました。

奴はずっと僕らを追い掛けてきました。

僕は登ってきた道を転がる様に泣きながら逃げました。

逃げる最中、奴が発する紛れもない「殺気」と自分の中から湧き出る「恐怖」で気が狂いそうになりながら──

やっとの事で山を下りきって人通りの多い道に着いた時には僕らの後ろに奴はいませんでした。

友人達も泣いていました。

奴の事を知ったのは、携帯のサイトで同じ体験をした人の投稿を見てからです。

皆さんは奴を見た事がありますか?

もし奴を見たならば、その時は必死で逃げて下さい。

「クネクネ」は本当に存在します。

奴の殺気は本物です。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん

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